●「拵え事」にエネルギーを費やしていないか
今回は第14条を読んでいきます。
「政事と云へば、拵(こしら)へ事繕い事をする様にのみなるなり。何事も自然の顕れたる儘にて参るを実政と云ふべし。役人の仕組事皆虚政也。老臣など此風を始むべからず。大抵常事は成べき丈は簡易にすべし。手数を省く事肝要なり。」
「政事と云へば」と始まりますが、何回も申し上げているように「経営は」と考えていただいていいです。その経営が、「拵へ事繕い事をする様にのみなる」とは、よく読んでいますね。佐藤一斎という人はやはりそういう経験が非常に豊富だったのでしょう。
「こしらえ事」とは、わざとらしい、取ってつけたようなこと、「繕い仕事」の方は、その場しのぎです。そういうことばかりになりがちで、一日を振り返って考えてみると、それらに終始しがちである。仕事そのものに率直に向かわず、何かの前提となるべき「こしらえ事」を行い、一時逃れの指示を出して一日が終わっていくことになりがちだということです。
仕事にダイレクトに向かわないところでは、非常にエネルギーが必要です。そして、上に立つ人がこういう状態だと、下にはそれが倍加されてどんどん負荷がかかっていきます。悪い意味で言う「根回し」に力を消費して、社内を説得することに疲れてしまう。そのため、本来説得しなければいけない社会までは、手がまわらなくなる。私の見たところでは、ほとんどの社員のエネルギーが社内で落とされているような会社もあります。そのようなものはなるべく切っていけということです。
●「実政」を忘れた「役人の仕組事」になっていないか
「何事も自然の顕れたる儘にて参るを実政と云ふべし」。嘘偽りのない、本当に心の底から出てくる政治をやっているのが「実政」です。見栄や外聞、見てくれなどのようなものは一切ありません。「あるべきよう」をストレートに皆が語り、皆がそれを引き受ける。そういうものでなければ、組織はなかなか動かないということです。
「役人の仕組事皆虚政也」。「実政」ではなく、偽りの政治になっているということです。これは結局、他人、特に上司の評価が第一義にある弊害を言っているのです。例えば政治で言えば、「国民のためになるか」ではなく、一から十まで万事「どういう評価をいただくか」に終始している。そういう人のことを、ここでは仮...