●一つとして同じもののない社風は上から始まる
今回は、まず第15条です。
「風儀は上より起るもの也。人を猜疑し陰事を発き、たとへば誰に表向ケ様に申せ共、内心はケ様なりなどと、掘出す習いは甚あしゝ。上に此風あらば、下必其習となりて、人心に癖を持つ。上下とも表裡両般之心ありて治めにくし。何分共此六かしみを去り、其事の顕れたるまゝに公平の計ひにし、其風へ挽回したきもの也。」
これも重要なことです。私はこれまで2000社あまりの会社をご指導申し上げてきましたが、一つとして同じような風土、社風の会社はありません。社風とは不思議なもので、皆違います。
では、その社風は誰がつくるのでしょうか。ここにあるように、「風儀は上より起るもの也」。要するに、社風というものは良きにしき悪しきにつけ、上からずっと下りてくるものだということを忘れてはいけません。
●最も悪いのは「猜疑し、陰事をあばく」社風
中でも、一番いけない悪い社風とは何かというと、「人を猜疑し、陰事を発き」とあるように猜疑心の塊のような組織です。
隠しておきたいことは、本来誰にでもあるものですが、それを全部暴いて、「お前、本当はこうだろう」とずかずか言挙げするようなことが、第一に挙げられています。
もう一ついけないことが次の段の「表向ケ様に申せ共、内心はケ様なり」です。例えば部下のA君に「表向きはこうなっているけど、本当のところはこうなんだ」と言ってしまう。これは「表と裏がある」と教育しているようなものです。これらを「掘出す習は甚だあしゝ」で、ひどく悪い。「掘出す」とは、本来隠れていなければならず、掘り出すべきではないものを掘り出してくるような悪い慣習を指しているのです。
「猜疑し、陰事を発き」で、全てを疑ってかかり、誰もが皆「本当だろうか」と人を信用しないような社風。そして、さらに隠しておきたいことをどんどん暴いていくような社風。それから、次に裏表がある人間のことを言っています。表向きはこうだけれど裏はこうなっているというようなことばかりを言い、「君にだけは本当のことを教える」などと言って派閥をつくろうとするタイプ。言われた相手は「じゃあ、ウソのことだったんですか」ということになります。
そういうことを都度都度やるような風習があれば、「上に此風あらば」で、下はいつしかそうい...