重職心得箇条~管理職は何をなすべきか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
政治でも経営でも、大切なのは「ドライブ」感覚?
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(12)「虚懐転化」と「抑揚之勢」
田口佳史(東洋思想研究家)
佐藤一斎『重職心得箇条』の第12条と第13条を読んでいく。「大臣たるもの」と「そうでない人」は、どこでどういう差が出るのか。東洋思想研究者・田口佳史氏の解説は、現代の組織にもピタリと当てはまる。(全14話中第11話)
時間:10分46秒
収録日:2016年2月3日
追加日:2016年6月20日
≪全文≫

●上に立つ者は、何事にも定見を持たなければならない


 第12条に入ります。

 「大臣たるもの、胸中に定見ありて、見込たる事を貫き通すべき元より也。然れども又虚懐公平にして人言を采り、沛然と一時に転化すべき事もあり。此の虚懐転化なきは、我意之弊を免れがたし。能々思察あるべし。」

 上に立つ者の心得としては、問われるまでもなく「胸中に定見」、自分の意見や見識がまずなければいけない。上に行けば行くほど、何かの折に話す機会や意見を求められる機会が増えてきます。たとえ求められていなくても、一つ一つのことについて自分の意見というものを定めておく必要があります。

 ですから、万般に対する日頃の勉強がいかに重要かということになります。国際情勢についてしかり、景気の件についてしかり。勉強を重ねた末に「自分はこう思う」という見識を持つことが重要なのです。

 「見込たる事を貫き通すべきは元より也」。「見込みたる」というのは、計画や目標に当たります、それを貫き通すべきであるのはもう元よりであって、当たり前のことだと言っています。


●私心を廃せば、採るべき意見が入り、物事が動く


 「然れども又虚懐公平にして」。これは、別の言葉でいえば「虚心坦懐」ということです。胸の中に私欲などといったものは全くないような状態にしておく。そうすると空っぽですから、人の言った良いことがストレートに入ってきて、悪いものはパッと去るようになっています。

 したがって「人言を采り」ができてくる。「そうだな。この人の言う通りだな」と耳を傾け、「自分は別の指示を出したけれど、ここは彼の言う通り、こっちを取ろう」と言えるわけです。

 そうすると、「沛然と一時に転化すべき事もあり」。「沛然」は豪雨がすさまじく降る様子を指します。そのような状況から一瞬にしてさっと大雨が上がることもあると言っているのです。そのように、「そうだ。こちらの方が正しい」と思ったら、体裁などは構わずに「申し訳ないけれど、先ほどの指示は間違っていた。こちらの方がいい。これを採用しよう」と転化して、瞬時に変えるぐらいの力量がなければ駄目だと言っています。

 「此虚懐転化なき」は、どうなるか。虚心坦懐になって、全く私欲のない心になっているからこそ、人の意見が身に染みるわけで、時を得た人の意見に出会ってもパッと変えられないのは「...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
新しい学び直しの方法と可能性
技術革新で「学び直し」は廉価に国境を越える
小林りん
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
ブランド戦略論をどう読むか(1)ブランドとは何か
ブランドとは何か…企業の本質的な部分に与えるインパクト
田中洋

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子