社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
続く円安に見る日本林業再生のチャンス
日本は世界有数の森林国。国土面積に占める森林面積は約68.2%、先進国の中でフィンランドに次ぐ第2位とは少し意外で、誇らしくなってくる数字ではありませんか。なんといっても森林は「緑の社会資本」。水質浄化や二酸化炭素の吸収など、さまざまな面で重要な役割を果たしてくれています。東京大学第28代総長で三菱総合研究所の理事長としてプラチナ構想ネットワークを牽引する小宮山宏氏も、「豊富な森林資源が日本を救う要の一つになる」と考えています。
外国材の輸入により国産材の価格が暴落し、採算が合わないために放置されてしまった荒廃林がいたるところに広がっているのが現状。間伐などの手入れがなされない荒廃林は、ちょっと雨が降ると土砂崩れや鉄砲水を引き起こす原因にもなっていると指摘されます。
森林荒廃問題はまさに「マイナスの連鎖」なのですが、この連鎖は「自分は損をしないように」と抑制的に動く人の存在が原因となっています。このようなときに、思い切ってもう一つの「マイナス要因」を掛け合わせてみるのが、プラチナ構想流。森林問題に掛け合わせようと小宮山氏が考えているのは、輸入企業を直撃している「円安」です。
円安だからと、現にあるサプライチェーンを急激に変えるわけにはいきません。森から伐採した木は、韓国や中国などの木のない国への輸出材料になります。そのとき、円安が効力を発揮します。円が120円の時代と80円の時代を比較すれば、約3分の2で相手国に売ることができ、非常に高い競争力をもてるからです。
この森林地帯に「前向きな林業」を起こすことで、若者が集まってくると小宮山氏は考えています。すでに「環境未来都市」の剪定を受け、木材加工から木質バイオマスエネルギーへの転用まで、林業への取り組みは他と一線を画しています。さらに若者の定住化をはかるには、アメリカやカナダのような広大な土地の林業ではなく、ヨーロッパのオーストリアなどをお手本にして「稼げる」林業を目指すこと。
オーストリアで進んでいるのは、木の情報化です。良い木・悪い木の評価をまず3段階、さらにそれぞれの中で3段階に細分化しているため、注文に応じて1週間以内に、それを切って届けることができる。効率を高めるヤマト運輸の荷物管理のようなことを、林業でも行うための実験が、今下川町で進められています。
プラチナ産業の定義は「生活のクオリティを上げていくこと」。水力発電は安心・安全で再生可能なエネルギーとしてインフラを担ってくれますし、林業は山の保持や維持にもなります。さらに、これらは環境やエコロジーへの配慮を通して、生物多様性の保全にもつながります。
同時に注目しているのが、「安全・安心な食」の開発と確保。日本の魅力ある食材は十分な国際競争力を持っています。最先端の科学と技術を動員して、日本の大地が日本の活力をよみがえらせてくれる時代に、期待を寄せたくなってきます。
マイナスの連鎖を「×マイナス」で断ち切る
森林は何をするにも100年単位。息の長い仕事なので、現代のペースには合いません。また、戦後期に広葉樹を伐採して杉やヒノキを植樹したことが花粉症の増加につながったことも指摘されています。かつては「宝の山」として大きな財産だった山が、今や後継者からお荷物扱いされるようになったのは見逃せない問題です。外国材の輸入により国産材の価格が暴落し、採算が合わないために放置されてしまった荒廃林がいたるところに広がっているのが現状。間伐などの手入れがなされない荒廃林は、ちょっと雨が降ると土砂崩れや鉄砲水を引き起こす原因にもなっていると指摘されます。
森林荒廃問題はまさに「マイナスの連鎖」なのですが、この連鎖は「自分は損をしないように」と抑制的に動く人の存在が原因となっています。このようなときに、思い切ってもう一つの「マイナス要因」を掛け合わせてみるのが、プラチナ構想流。森林問題に掛け合わせようと小宮山氏が考えているのは、輸入企業を直撃している「円安」です。
円安だからと、現にあるサプライチェーンを急激に変えるわけにはいきません。森から伐採した木は、韓国や中国などの木のない国への輸出材料になります。そのとき、円安が効力を発揮します。円が120円の時代と80円の時代を比較すれば、約3分の2で相手国に売ることができ、非常に高い競争力をもてるからです。
北海道下川町で始まっている「稼げる」林業
プラチナ社会研究会の試算では、林業が活力を取り戻すと、新たに50万人の雇用が生み出せます。その現場となるのは、たとえば北海道下川町。スキー・ジャンプでレジェンドとなり平昌五輪でも選手団旗手をつとめた葛西紀明選手の出身地で、面積は東京23区全体と同じぐらいですが、うち9割が森林、人口は3400人です。この森林地帯に「前向きな林業」を起こすことで、若者が集まってくると小宮山氏は考えています。すでに「環境未来都市」の剪定を受け、木材加工から木質バイオマスエネルギーへの転用まで、林業への取り組みは他と一線を画しています。さらに若者の定住化をはかるには、アメリカやカナダのような広大な土地の林業ではなく、ヨーロッパのオーストリアなどをお手本にして「稼げる」林業を目指すこと。
オーストリアで進んでいるのは、木の情報化です。良い木・悪い木の評価をまず3段階、さらにそれぞれの中で3段階に細分化しているため、注文に応じて1週間以内に、それを切って届けることができる。効率を高めるヤマト運輸の荷物管理のようなことを、林業でも行うための実験が、今下川町で進められています。
プラチナ社会は「生活のクオリティ」を目指す
小宮山氏はまた、地域の活力を「中小水力発電」に求めています。今はまだ普及台数が少ないために電気価格が高くなっていますが、1万基から10万基になれば、1kW10万円以下の電力として、輸出も可能になっていきます。プラチナ産業の定義は「生活のクオリティを上げていくこと」。水力発電は安心・安全で再生可能なエネルギーとしてインフラを担ってくれますし、林業は山の保持や維持にもなります。さらに、これらは環境やエコロジーへの配慮を通して、生物多様性の保全にもつながります。
同時に注目しているのが、「安全・安心な食」の開発と確保。日本の魅力ある食材は十分な国際競争力を持っています。最先端の科学と技術を動員して、日本の大地が日本の活力をよみがえらせてくれる時代に、期待を寄せたくなってきます。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候
古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」
グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援
グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る
いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新
前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ
大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦
高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す
国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29