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胃がん検診「陽性」でも98%は胃がんじゃない?
2013年に新たに診断されたがんは862,452例(男性498,720例、女性363,732例)。一方、2016年にがんで死亡した人は372,986人(男性219,785人、女性153,201人)と発表されています(国立がん研究センター調べ「日本の最新がん統計」より)。
この数字を見て、どう感じたでしょうか。「がんは治る病気になってきたのか」と考えるあなた、そのポジティブな考え方は、がん予防にも治療にも役立つこと、まちがいありません。
日本人の死亡原因の1位が「がん」であるのは、こうしてみると人口の高齢化に伴う必然とも言えそうです。年齢別にみると、現在40歳の人が20年後までにがんで死亡する確率は男女とも2%に過ぎません。
食生活の変化などにより、現在の日本での有病率は、大腸がんに次ぐ2位。生涯罹患リスクは、男性11%、女性5%と言われています。治療後の5年生存率も60%以上まで上がってきています。
それでも、バリウムを飲んでX線撮影をされたり、内視鏡(胃カメラ)で観察されるなど、それなりに負担のある検診を受けた後、「要二次検査」の通知をもらうと、不安になります。でも、胃がん検診を1万人が受けると、精密検査を受けるよう勧められるのは638人。うち実際に精密検査を受ける人は516人いますが、胃がんの見つかる人は12人です。いわば集団検診はスクリーニングに過ぎず、二次検査以降が本番と言えます。確率で表すと、全受診者の中でがんが見つかる可能性は0.13%で、それが二次検査に進んだ段階でも2.3%になるだけです。つまり、二次検査に進んだ人の98%近くは、がんが見つかることはないということです。
そこでこの数字をどう見るかですが、通知をもらったら、「よりくわしく調べてもらうチャンスを得た」ととらえるのはどうでしょう。2.3%のリスクに対して「もしかしたら」とクヨクヨ悩むと、それがストレスになってかえって悪い結果をもたらしてしまうこともあります。
ピロリ菌は胃粘膜にすむ細菌で、感染は免疫力の低い幼少時に、不衛生な水環境を介して起こります。徐々に胃粘膜の萎縮がもたらされ、萎縮状態が進むほど、胃潰瘍や胃がんの発生につながります。逆にピロリ菌に感染していなければ胃がんの発症はほとんど見られません。
そこで、従来のX線撮影を見直して、ピロリ菌の検査と、胃炎の有無を調べるペプシノゲン検査の組み合わせによる「胃がんリスク検診(ABC検診)」を行う医療機関も増えています。
これは、「がんを見つける検査」ではなく、「がんになる危険性」を見極める新しい検査方法です。何よりも、ピロリ菌に感染していない人は胃がんになるリスクがほとんどないため、その後胃がん検診を受けなくても安心して生活できるメリットがあります。
感染が見つかった人は、胃カメラ検査を受けた後、ピロリ菌除菌を行います(2013年より保険適用となっています)。追跡調査の結果、60歳ぐらいで早期の胃がんを発症した人であっても、除菌することで胃がんの発生が抑制されることが確認されています。先の東京五輪が行われた1964年以前に生まれ育った方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
この数字を見て、どう感じたでしょうか。「がんは治る病気になってきたのか」と考えるあなた、そのポジティブな考え方は、がん予防にも治療にも役立つこと、まちがいありません。
がんは「増えた」のか、「治る病気」になったのか
実際には、人口全体の高齢化が進んだため、がんの罹患率自体が増加しています。がんが死亡原因となる生涯リスクは、男性25%(4人に1人)、女性16%(6人に1人)ですが、男性でがん死亡率が増加しているのは80歳代以上。女性でも40歳代から60歳代の死亡率が減少し、85歳以上の死亡率が増加しています。日本人の死亡原因の1位が「がん」であるのは、こうしてみると人口の高齢化に伴う必然とも言えそうです。年齢別にみると、現在40歳の人が20年後までにがんで死亡する確率は男女とも2%に過ぎません。
胃がん「二次検査」で引っかかっても、あわてない
40年ほど前まで、胃がんは日本人に圧倒的に多いがんでした。専門家によると、日本だけでなく東アジアとラテンアメリカの人々に多いのが特徴。欧米ではあまり見られない症状だと言います。食生活の変化などにより、現在の日本での有病率は、大腸がんに次ぐ2位。生涯罹患リスクは、男性11%、女性5%と言われています。治療後の5年生存率も60%以上まで上がってきています。
それでも、バリウムを飲んでX線撮影をされたり、内視鏡(胃カメラ)で観察されるなど、それなりに負担のある検診を受けた後、「要二次検査」の通知をもらうと、不安になります。でも、胃がん検診を1万人が受けると、精密検査を受けるよう勧められるのは638人。うち実際に精密検査を受ける人は516人いますが、胃がんの見つかる人は12人です。いわば集団検診はスクリーニングに過ぎず、二次検査以降が本番と言えます。確率で表すと、全受診者の中でがんが見つかる可能性は0.13%で、それが二次検査に進んだ段階でも2.3%になるだけです。つまり、二次検査に進んだ人の98%近くは、がんが見つかることはないということです。
そこでこの数字をどう見るかですが、通知をもらったら、「よりくわしく調べてもらうチャンスを得た」ととらえるのはどうでしょう。2.3%のリスクに対して「もしかしたら」とクヨクヨ悩むと、それがストレスになってかえって悪い結果をもたらしてしまうこともあります。
胃のリスクを調べる「ABC検診」とは?
胃がもたれたり重かったりする症状で、慢性胃炎と言われている人も多いでしょう。名称は軽いイメージですが、胃がピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染した結果できあがることが多く、胃がんのリスクが高い「前がん状態」と呼ぶ医師もいます。ピロリ菌は胃粘膜にすむ細菌で、感染は免疫力の低い幼少時に、不衛生な水環境を介して起こります。徐々に胃粘膜の萎縮がもたらされ、萎縮状態が進むほど、胃潰瘍や胃がんの発生につながります。逆にピロリ菌に感染していなければ胃がんの発症はほとんど見られません。
そこで、従来のX線撮影を見直して、ピロリ菌の検査と、胃炎の有無を調べるペプシノゲン検査の組み合わせによる「胃がんリスク検診(ABC検診)」を行う医療機関も増えています。
これは、「がんを見つける検査」ではなく、「がんになる危険性」を見極める新しい検査方法です。何よりも、ピロリ菌に感染していない人は胃がんになるリスクがほとんどないため、その後胃がん検診を受けなくても安心して生活できるメリットがあります。
感染が見つかった人は、胃カメラ検査を受けた後、ピロリ菌除菌を行います(2013年より保険適用となっています)。追跡調査の結果、60歳ぐらいで早期の胃がんを発症した人であっても、除菌することで胃がんの発生が抑制されることが確認されています。先の東京五輪が行われた1964年以前に生まれ育った方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
<参考サイト>
・国立がん研究センター:最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
・日本消化器病学会:ピロリ菌と胃がん」
http://www.jsge.or.jp/citizen/2007/hokuriku2007.html
・日本健康増進財団:ご存知ですか?胃がんリスク検診
http://www.e-kenkou21.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/abc08251.pdf#search=%27ABC%E6%A4%9C%E8%A8%BA%27
・国立がん研究センター:最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
・日本消化器病学会:ピロリ菌と胃がん」
http://www.jsge.or.jp/citizen/2007/hokuriku2007.html
・日本健康増進財団:ご存知ですか?胃がんリスク検診
http://www.e-kenkou21.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/09/abc08251.pdf#search=%27ABC%E6%A4%9C%E8%A8%BA%27
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