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ミッキーの著作権がなくならないのはなぜ?
みなさん、著作権の知識はどのくらいお持ちですか?漠然と、「作品の権利を守る法律」というイメージではないでしょうか? 現在の日本の著作権法では、作品の権利が保護されるのは制作者の没後50年とされています。これは世界共通のものではなく、アメリカでは没後70年、法人著者の場合は発行後95年間、または制作後120年間のどちらか短い方と定められています。
しかし、1790年にアメリカで著作権法が誕生した時は、たった14年という短い期間でした。これが延びにのび、なぜ「法人では120年」という長期間となったのでしょうか?実は著作権延長法の背景には、世界で最も有名なネズミのキャラクター、ミッキーマウスが関係していると言われています。
権利元のディズニーは期限切れの1984年を前に、著作権延長のためのロビー活動を行ったといわれています。そうして1976年、当時の「作品発表から56年間」を、同時期にヨーロッパの規準となっていた「著者の死後50年間」に変更しました。こうして2003年まで『蒸気船ウィリー』の著作権保護期間は伸びたのです。ですが、再び期限切れを前に法律が改正され、2023年まで延長されることになりました。
ミッキーの著作権切れが近づくごとに、保護期限が延長されるため、アメリカの著作権延長法は「ミッキーマウス保護法」「ミッキーマウス延命法」と揶揄されているのです。資本主義国らしいエピソードですが、この余波は日本にも及んでいます。
しかし、これだけ聞くと「著作権を保護することの何がいけないの?」と感じる方も多いと思います。著作権を守ることはとても大切なことですが、実は「守りすぎ」も問題なのです。
作者の没後は、親族などに著作権が移行しますが、没後70年も経つと権利関係が複雑化し、作品を再掲載・再発行することは難しくなっていきます。そうこうしているうちに作品が散逸してしまう危険性があるのです。現在も、著作権保護期間中の多くの作品が、権利者が見つからない「オーファンワークス」(孤児作品)だと言われています。これらの作品は、しっかりと誰かが保護をしていかない限り、やがて世界から消えていく運命にあります。しかし、アーカイブへの保存なども、著作権保護期間である限り、権利者の許可が必要なのです。
一方、作品保護が長くなれば、「クリエイターの制作意欲があがる」「遺族の収入が増える」とう利点があげられています。しかし、クリエイターのほとんどは、自分の死から70年後に、どう作品を取り扱うかを想定はできないでしょう。また、大半の作品は50年も発売を継続できません。遺族の収入が増えるというのも、ほんの一握りの名作家だけの話と言えます。
小説や映画、音楽、漫画など、世界にはたくさんの作品があふれています。そのいずれもが、著作権という問題と切り離すことができません。
少し遠い話のように聞こえる著作権問題ですが、好きな小説や漫画を思い浮かべてみてください。著作権法は、著作権で稼ぐことが目的ではありません。魅力的な作品をひとつでも多く後世に残し、それらが100年後の人類のために生かされること、一人でも多くの人々に正しい形で提供されることが著作権の持つ役割なのです。
しかし、1790年にアメリカで著作権法が誕生した時は、たった14年という短い期間でした。これが延びにのび、なぜ「法人では120年」という長期間となったのでしょうか?実は著作権延長法の背景には、世界で最も有名なネズミのキャラクター、ミッキーマウスが関係していると言われています。
「ミッキーマウス延命法」と揶揄されるアメリカの著作権法
ミッキーマウスが登場したのは1928年のこと。短編アニメーション『蒸気船ウィリー』がそのはじまりでした。『ウィリー』の登場以前から、少しずつ著作権の保護期限は延びていましたが、それでも1984年には保護期間の失効となるはずでした。ですが、現在も『蒸気船ウィリー』の著作権は保護されています。権利元のディズニーは期限切れの1984年を前に、著作権延長のためのロビー活動を行ったといわれています。そうして1976年、当時の「作品発表から56年間」を、同時期にヨーロッパの規準となっていた「著者の死後50年間」に変更しました。こうして2003年まで『蒸気船ウィリー』の著作権保護期間は伸びたのです。ですが、再び期限切れを前に法律が改正され、2023年まで延長されることになりました。
ミッキーの著作権切れが近づくごとに、保護期限が延長されるため、アメリカの著作権延長法は「ミッキーマウス保護法」「ミッキーマウス延命法」と揶揄されているのです。資本主義国らしいエピソードですが、この余波は日本にも及んでいます。
日本でも保護期間が没後70年に変更される?
実は、TPPにアメリカが参加を表明していたころの話し合いでは、日本も著作の保護期限を没後70年に改正する方向で調整がされていました。現在、アメリカのTPP交渉からの脱退によって棚上げになった著作権延長法ですが、政府は70年で調整の方針を変えていません。しかし、これだけ聞くと「著作権を保護することの何がいけないの?」と感じる方も多いと思います。著作権を守ることはとても大切なことですが、実は「守りすぎ」も問題なのです。
著作権保護を延ばすことで逆に作品が消える?
確かにミッキーのような有名な作品・キャラクターは、作者であるウォルト・ディズニーの没後も、世界中の人々に親しまれ続けています。しかし、世に生まれ出た作品の多くは、残念ながらミッキーのように長く人々の記憶に残ることは困難です。作者の没後は、親族などに著作権が移行しますが、没後70年も経つと権利関係が複雑化し、作品を再掲載・再発行することは難しくなっていきます。そうこうしているうちに作品が散逸してしまう危険性があるのです。現在も、著作権保護期間中の多くの作品が、権利者が見つからない「オーファンワークス」(孤児作品)だと言われています。これらの作品は、しっかりと誰かが保護をしていかない限り、やがて世界から消えていく運命にあります。しかし、アーカイブへの保存なども、著作権保護期間である限り、権利者の許可が必要なのです。
一方、作品保護が長くなれば、「クリエイターの制作意欲があがる」「遺族の収入が増える」とう利点があげられています。しかし、クリエイターのほとんどは、自分の死から70年後に、どう作品を取り扱うかを想定はできないでしょう。また、大半の作品は50年も発売を継続できません。遺族の収入が増えるというのも、ほんの一握りの名作家だけの話と言えます。
著作権の持っている役割とは?
何事も欧米に右へならえの日本ですが、こうした背景から、実は著作権保護期間延長については反対意見も根強く、保護される立場にあるクリエイターの人々からも延長を懸念する声があがっています。今まさに作品を制作している人々にとって、死後の著作権を延ばすよりも、インターネット上などで蔓延している海賊版対策の方が急務といえるでしょう。小説や映画、音楽、漫画など、世界にはたくさんの作品があふれています。そのいずれもが、著作権という問題と切り離すことができません。
少し遠い話のように聞こえる著作権問題ですが、好きな小説や漫画を思い浮かべてみてください。著作権法は、著作権で稼ぐことが目的ではありません。魅力的な作品をひとつでも多く後世に残し、それらが100年後の人類のために生かされること、一人でも多くの人々に正しい形で提供されることが著作権の持つ役割なのです。
<参考サイト>
・弁護士ドットコムNEWS:著作権「死後70年」延長報道…福井弁護士「作品散逸の恐れ」「海賊版対策こそ急務」
https://www.bengo4.com/internet/n_7450/
・弁護士ドットコムNEWS:著作権「死後70年」延長報道…福井弁護士「作品散逸の恐れ」「海賊版対策こそ急務」
https://www.bengo4.com/internet/n_7450/
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