社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.01.19

人はなぜ無駄遣いしてしまうのか?

 「また今月も貯金できなかった……」。こうしたお金の悩みを抱えている人は多いでしょう。けれどもお金が貯まらないのは、単純に収入が支出を上回る生活をしている=無駄遣いをしているから。でも多くの人が「ぜいたくはしていないはず」と言います。気をつけていても、人はどうして無駄遣いをしてしまうのでしょうか?

そもそも人は無駄遣いしやすい

 行動経済学に「メンタルアカウンティング(心の会計)」という言葉があります。給与は生活費と貯蓄へ、投資やギャンブルで得たお金は豪快に遣うといったように、お金の入手法や環境によって無意識にお金を使い分ける心理傾向のことです。しかも、その勘定は極めて不合理な部分が多く、無駄遣いの要因ともいわれます。

 たとえば普段はスーパーで1円でも安い食料品を買うようにしているのに、通勤がてらオシャレなカフェで高いコーヒーを買ったり、ボーナスが出れば「自分へのご褒美」と高級品を買ってしまう、といったことはありませんか? これもメンタルアカウンティングの働きの一種です。

 このように人は心理的に無駄遣いをしやすく、お金が貯まらないのはある意味仕方がない面があります。またこのメンタルアカウンティングを利用して、企業は人の消費を促しているのです。

 習慣化された消費心理をコントロールするのは難しいですが、とはいえ無駄遣いが過ぎては最悪の場合、自己破産など悲惨な目に遭ってしまいかねません。

 まずは上記の通り、「人は無駄遣いしやすい」ということを理解しておきましょう。

無駄遣いが「習慣化」されやすい人の特徴

 下記は生活でよくあるシーンです。これらが習慣化している人は衝動買いが多い、つまり無計画に無駄遣いをしやすい傾向にあります。

・コンビニでついで買いをしてしまう
・限定やセールに飛びつく
・まとめ買いした分を使い切れない(食料品を冷蔵庫の中で腐らせてしまう、買ったことを忘れる)
・タンスの肥やしが多い
・買い物はいつもネットショッピング
・カード払いに抵抗がない

 なんとなくコンビニで定価のお菓子を買うのはもったいないですし、まとめ買いや大袋、セール品は一見お得なように見えても、使い切れなければ結局のところ損です。インターネットは衝動買いを誘発する広告が多く、カード払いはお金を遣う感覚が鈍くなりがち。このような傾向にハマる方は、注意したいところです。

 とはいえ、便利な生活に慣れてしまうと「無駄遣いしないよう、強い意志を持て」と言われても、なかなか難しいですよね。では、どうすれば無理なく、無駄遣いが減っていくのでしょうか。

 これから、無駄遣いを予防する方法の一例をご紹介しましょう。いずれも自称・浪費家の筆者が実践し、有効だと実感している方法です。

無駄遣いを予防する方法① 買う前に「時間を置く」

 何かを買う時は、「本当に自分にとって必要かどうか」をきちんと見極めることが大切です。その方法は、いたってシンプル。「欲しい」と思ったらいったんその場を離れ、時間を置いてみるのです。

 数百円以内のものであれば1日、3000~5000円ほどのものであれば1週間以上が目安です。1万円以上の大きな買い物の場合は1ヶ月~3ヶ月は間を空けましょう。ネットショッピングの場合、離れようと別のサイトに遷移しても広告が目に入ることがあるので、ネットそのものを閉じて別の作業に取りかかるほうがオススメ。その間、欲しいものはすでに所持している何かで「代用」できないかを探しておくと、さらに無駄遣い防止に効果的です。

 時間を置いてみて、それでも欲しいのなら買ってOK! 気持ち良くお金を支払いましょう。

無駄遣いを予防する方法②「お金の流れを把握する」

 お金のことになると、ついつい見て見ぬフリをしていませんか? 無駄遣いをする人はほとんどの場合、「自分の状況を理解していない」ことが大きな要因となっています。無駄遣いを抑えて貯蓄を殖やしたいなら、現実を直視してお金の流れをしっかりと把握することです。

 お金の管理といえば「家計簿」が王道ですが、挫折しやすいのも事実。そこでオススメなのが「デビットカード」そして「家計簿アプリ」です。

 デビットカードとは自分の口座から直接支払うカードのこと。口座の残高分のお金しか遣えないので、自然とお金の使い方にストッパーがかかり、浪費家さんにうってつけです。デビットカードが使えるショップはどんどん増えているので、利用する機会はこれから間違いなく増えていくでしょう。

 さらにMoney Forwardに代表される「家計簿アプリ」も非常に便利です。持っている銀行口座やカードをアプリと連携・登録しておけば、預金額やカードの利用履歴などがリアルタイムで表示されます。家計簿をつける手間はもちろん、計算違いもありませんので、貯蓄額の目標を立てやすくなるでしょう。

 不明瞭なお金の流れをはっきりさせることができれば、ストレスがグッと減ります。実際に、浪費家の筆者もこれらを使いながら毎月5000~1万円の貯金ができています。ぜひ利用してみてくださいね。

どんな方法でも「実践して継続させる」ことが大切

 いかがだったでしょうか。まず何よりも、自分のお金の使い方を明確化することが大切だということがお分かりいただけたかと思います。

 最終的にはどの方法でも実践し続けられるよう、モチベーションを維持することが重要です。「××円貯めて海外旅行をする」など目標を立てるのもよいですし、「月○○円は自由に使えるお金にする」というふうに、シビアになりすぎないようにするのもポイントです。

 ケチケチしてばかりでは、味気ない人生になってしまうもの。楽しみながら効率よく、無駄遣いを減らしていってくださいね!

<参考サイト>
・リチャード・セイラーとメンタル・アカウンティング(働き方研究所 TeamSpirit)
https://www.teamspirit.co.jp/workforcesuccess/diversity/Mental-Accounting.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

日本の外交には「インテリジェンス」が足りない

インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動

国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
中西輝政
京都大学名誉教授 歴史学者 国際政治学者
2

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
3

葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る

葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る

編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為

葛飾北斎と応為という「画狂親娘」の人生と作品について、堀口茉純先生にそれぞれの絵をふんだんに示しながら教えていただいた講義を、今回の編集部ラジオで紹介しました。

葛飾北斎といえば知らぬ人はいない江戸の絵...
収録日:2025/12/04
追加日:2025/12/18
4

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生

葛飾北斎の娘であるお栄は、「応為」という画号で独自の絵画表現を切り拓いた。北斎とは異なる、女性ならではの描き方は、特に身体表現に現れ、西洋画の陰影表現の色濃い影響を感じさせる。積極的に新たな画法を吸収し、後世の...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/13
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
5

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想

平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由

かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授