テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.05.23

通勤でスーツにリュックは「あり」か「なし」か


 スーツ姿にリュックサック、近年珍しくなくなってきた通勤スタイルですね。夏場のクールビズ普及とともに職場のドレスコードも緩和され、2000年代初頭から30代・40代を中心に広がっていると言われています。

 認知されつつある一方で、ビジネスマナー本では「NG」と書かれたものが大半です。どうしても背負う鞄を使いたいのであれば3WAY(手に持つ、肩にかける、背負うの3通りに使える)のものが勧められています。スーツにリュックは身軽で便利?社会人のスタイルにはふさわしくない?両方の意見を集めてみました。

手提げ鞄とリュックサックが日本で使われ始めたのは?

 日本に「鞄」と「リュックサック」がやってきたのは明治時代になります。もちろん似たような形の荷物入れは使われていましたが、新しくやってきた洋風文化として定着していったようです。

 現代にまで続いているサラリーマンのスーツに手提げ鞄(ブリーフケース)というスタイルは大正時代から昭和初期にひろがりました。書類を扱うにはぴったりだったわけですね。
 一方、リュックサックは登山やハイキングで使われ、同じように背負って使われるランドセルなどは、元は軍隊で使われていた背嚢を通学鞄に改良して用いられたことで広がっていきます。

スーツにリュックはなし! 否定派の意見

「スーツにはネクタイ、鞄、革靴。身なりを整えることから仕事は始まる。リュックサックでは常識がないのかと疑われる」(元サラリーマン 67歳)
「リュックサックはどうしても幼く見えると思う」(公務員 58歳)
「高齢の人を訪問することが多いので手提げ鞄を使っています」(医療用器具営業 28歳)

 この使用目的のイメージが、60代前後の年代層を中心に強くあるようです。また、企業や職種によっては年代を問わず、たとえ通勤の間であっても、スーツにリュックサックはマナー違反であるという声が寄せられています。ビジネスマンは本当に良い鞄をひとつだけ買って使い込むものだというダンディズムを語ってくれた方もいました。

「ダサいです……」(OL 24歳)

 また、働く男性のスーツ姿にキュンと来るという女性陣には、リュックはマイナスという意見もチラホラ上がりました。

「満員電車にリュックはやめてくれ」(複数の方より)

 リュックNGの理由に、「電車内で邪魔」だという意見がかなり寄せられました。日本民営鉄道会社協会の発表によれば、2018年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」において、「荷物の持ちかた・置きかた」が初めて1位になったそうです。中でもリュックサックは内訳の約7割を占めており、不快に思われる荷物の筆頭に……愛用者には気をつけていただきたいところですね。

スーツにリュックも良いじゃないか 肯定派の意見

「通勤時はビジネスシーンにマッチするデザインのリュックを使っています。ノートパソコンやその他機器を持ち歩くので容量の大きいのもありがたいです」(通信会社 33歳)
「手提げ鞄じゃ商売道具が収まりきらない」(建築関係 29歳)

 リュックサック肯定派は実用性重視、20代から40代を中心に賛成票が集まりました。ノート型パソコンをはじめ資料を大量に持ち歩く仕事に就いている方はやはりある程度の内容量が必要になりますよね。また、両手が空いているとタブレットやスマホなどの操作に不自由しない点も現代の需要にあっている点でも選ばれています。

「いざというとき走れるし、プライベートから仕事までリュックを使っています。中には防災セットも一式入れてあります」(記者 38歳)

 東北の震災時に帰宅難民になって苦労した経験からリュックサック型を使っているという声も寄せられました。自然災害に見舞われる機会の多い日本で生活している以上、日頃持ち歩く道具はいざという時への備えにもなるという点は見落とし難いですね。

手提げ鞄もリュックサックもあり、TPOに合わせて派

「顧客を訪問するときはブリーフケース、通勤はリュックサックでしています」(転職アドバイザー 32歳)
「自転車通勤しているのでリュックサックです。会社には手提げ鞄を常備」(保険会社社員 30歳)

 今回の調査でもっとも多かった答えがこちら、TPOに合わせて使い分ける……社会人としてのマナーそのものかもしれません。大事なクライアントに会うときや上司と出かける際には手提げ鞄を、通勤時や特に重要な案件のない時にはリュックサックと、柔軟に使い分けている方が多いようです。

 とはいえ、近年はIT産業の発展に伴い、ノーネクタイにジーンズ姿のトップたちが脚光を浴びる機会も珍しくなくなりつつあります。目まぐるしく変わっていく時代の中で、いつの日か「仕事着といえばスーツ」というスタイルさえも変わっていくのかもしれませんね。

<参考サイト>
・『かばんの歴史』一般社団法人 日本かばん協会
http://www.kaban.or.jp/gallery.php
・『平成30(2018)年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング』日本民営鉄道協会
https://www.mintetsu.or.jp/activity/enquete/2018.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

“死の終りに冥し”…詩に託された『十住心論』の教えとは

“死の終りに冥し”…詩に託された『十住心論』の教えとは

空海と詩(4)詩で読む『秘蔵宝鑰』

“悠々たり悠々たり”にはじまる空海『秘蔵宝鑰』序文の詩文。まことにリズミカルな連呼で、たたみかけていく文章である。このリフレインで彼岸へ連れ去られそうな魂は、選べる道の多様さと迷える世界での認識の誤りに出会い、“死...
収録日:2024/08/26
追加日:2024/11/23
鎌田東二
京都大学名誉教授
2

国家は助けてくれない…「三田会」誕生への大きな経験

国家は助けてくれない…「三田会」誕生への大きな経験

独立と在野を支える中間団体(6)慶應義塾大学「三田会」の起源

中間集団として象徴的な存在である慶應義塾大学「三田会」について考える今回。三田会は単に同窓会組織として存在しているわけではなく、「公」に頼れない場合に重要な役割を果たすものだった。その三田会の起源について解説す...
収録日:2024/06/08
追加日:2024/11/22
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授
3

日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化

日本の根源はダイナミックでエネルギッシュな縄文文化

日本文化を学び直す(1)忘れてはいけない縄文文化

大転換期の真っ只中にいるわれわれにとって、日本の特性を強みとして生かしていくために忘れてはいけないことが二つある。一つは日本が森林山岳海洋島国国家であるというその地理的特性。もう一つは、日本文化の根源としての縄...
収録日:2020/02/05
追加日:2020/09/16
田口佳史
東洋思想研究家
4

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事
5

謎多き紫式部の半生…教養深い「女房」の役割とその実像

謎多き紫式部の半生…教養深い「女房」の役割とその実像

日本語と英語で味わう『源氏物語』(1)紫式部の人物像と女房文学

日本を代表する古典文学『源氏物語』と、その著者である紫式部は、NHKの大河ドラマ『光る君へ』の放映をきっかけに注目が集まっている。紫式部の名前は誰もが知っているが、実はその半生や人となりには謎が多い。いったいどのよ...
収録日:2024/02/18
追加日:2024/10/14