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DATE/ 2019.07.14

どこまで「分煙」すればいいの…受動喫煙問題

 2016年8月31日、国立がん研究センターでは、受動喫煙のある人はない人に比べて肺がんになるリスクが約1.3倍として、これまで「ほぼ確実」としていた日本人の肺がんに対する受動喫煙のリスクを「確実」に引き上げました。こうした医療研究や、オリンピック開催を機に国際的な基準に合わせるように、東京都受動喫煙防止条例や、改正された健康増進法など、受動喫煙を抑止する法律が施行されるようになりました。

東京都受動喫煙防止条例

 東京都受動喫煙防止条例が可決・交布されたのは2018年で、2019年より体制を整備することを目的に、段階的に施行される運びになっています。1月に、都・都民・保護者の責務等、9月1日には学校等での特定屋外喫煙場所設置不可や店頭表示ステッカーの義務化の施行、オリンピック・ パラリンピック開催前の2020年4月1日には、罰則適用も含め、全面的に施行されます。

 ポイントは、敷地内禁煙として、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校等、その敷地内での喫煙ができなくなります。これまでは、分煙として敷地内での喫煙場所がありましたが、今回は、屋内外喫煙場所の設置も不可となります。

 また、飲食店においても従業員のいる飲食店は例外なく屋内禁煙(ただし喫煙室の設置可)。個人経営の小規模飲食店においては、標識を掲示すれば喫煙可となります。気になる「加熱式タバコ」の扱いですが、期限は未定ながら経過措置として、加熱式タバコ専用の喫煙室内であれば飲食しながらの喫煙は可となります。

 喫煙が可能となる4タイプの喫煙室についてですが、「喫煙専用室」「加熱タバコ専用喫煙室」「喫煙目的室」「喫煙可能室」に区分され、標識の掲示が義務付けられ、事業規模、事業内容に応じて認可されることになります。喫煙室は、当然のことながら、来店客・従業員ともに20歳未満は立ち入ることが規制されます。

 東京都受動喫煙防止条例は、健康影響を受けやすい子ども、受動喫煙を防ぎにくい立場の従業員を受動喫煙のリスクを低減することが大きな狙いということができそうです。

分煙への反発も

 法制によって規制されつつも、特定屋外喫煙場所設置といった分煙についても課題が残ります。千葉市では「公共的な空間は原則禁煙であるべきで、喫煙所は受動喫煙の被害を及ぼす恐れがある。その維持管理に税金を投じ、喫煙を奨励する必要はない」という内容の陳情が市議会に寄せられるなど、喫煙所の設置が住民の反対運動で頓挫したといいます。

 今後、経過措置的な喫煙室の運用を含めてどうなることか、分煙そのものの意味も問われそうです。なお、日本医師会のサイトにおいては、「受動喫煙をなくすためには、100%禁煙だけが唯一の対策」、「分煙しても完全にはたばこの煙の被害はなくなりません」と注意を喚起しています。

<参考サイト>
・国立がん研究センター:受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/0831/index.html
・東京都福祉保健局:東京都受動喫煙防止条例について
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/tokyo/file/0020190329.pdf
・NIKKEI STYLE:公衆喫煙所は迷惑施設か 分煙策なのに住民から反発も
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO36311420Q8A011C1000000/
・日本医師会:受動喫煙への対策
https://www.med.or.jp/forest/kinen/strategy/
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