社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
ハーバード教授、驚きの年棒~日米大学教育の違い
「このままでいいのか、日本の大学?」と誰もが思っている。組織改革の動きは遅々として進まないが、それには大学教員自身の意識を変え、マネジメント力を高める必要がある、と指摘するのが政策研究大学院大学(GRIPS)学長・白石隆氏だ。
その点、大学の研究者はここ数十年、留学に消極的だった傾向がある。狭い日本の中にいて「日本の流儀が」と言う人に、未来の人材教育は無理ではないか、と白石学長は指摘する。
優秀な研究者のヘッドハント、小さい場所への集積とその透明化、いずれもGRIPSが世界で通用する研究施設となるよう、白石学長が意識的に取ってきた手法だ。
どういうことかと言えば、他大学で一般的に行われる「後任人事」方式をとらず、学長が最終的な判断により採用を決定するのである。
ハーバードが学長面接で即断即決すると言っても、事前の候補者調査はもちろん行き届いていて、一流の研究者しかその場に現れない。学長は、その研究者が加わることによって学生に与える影響や場の活性化など、専門性とは別のフィルターを通して候補者を見るのだ。
アメリカの大学にならって、40代あたりで「研究か、マネジメントか」を教員自身に選ばせる段階があれば、事情は変わる。2種類のキャリア・パターンが用意されることは、伸び悩む研究者にも大学全体にも朗報となる。
シェフに見習え、大学教授
食の世界では、若い世代のオーナーシェフの活躍がめざましい。彼らの多くは外国で10年も15年も勉強したり働いたりして、日本へ戻っている。もともと優秀な人が集まる食の業界で、世界的な訓練を受けることの意味は大きい。その点、大学の研究者はここ数十年、留学に消極的だった傾向がある。狭い日本の中にいて「日本の流儀が」と言う人に、未来の人材教育は無理ではないか、と白石学長は指摘する。
マネジメントがものを言う
また、大学におけるマネジメントの力もこれまで見過ごしにされてきた重要なポイントだ。「うちの大学は、この分野で売る」とセールスポイントを定めれば、世界にアピールでき、競争力が上がり、学生集めにも効果を表す。優秀な研究者のヘッドハント、小さい場所への集積とその透明化、いずれもGRIPSが世界で通用する研究施設となるよう、白石学長が意識的に取ってきた手法だ。
ハーバードの即断即決
“世界の一流大学”と言えば誰もが思い描くハーバード大学は、年俸40~50万ドルと教員の待遇の良さでも有名だ。さらにこの大学は、教授の採用が学長面接にゆだねられていることでも、研究者の間には有名である。どういうことかと言えば、他大学で一般的に行われる「後任人事」方式をとらず、学長が最終的な判断により採用を決定するのである。
後任人事の長い道のり
後任人事がピンと来ない人は、山崎豊子の小説『白い巨塔』の教授選を思い出してほしい。定年などで辞める教授(テレビでは石坂浩二)が、自分の後がまにふさわしいと思う人物を挙げ(ここは実力なら唐沢寿明のはずだった)、公募や調査で数名の候補者を加えた上で、人事委員会による業績審査、教授会での投票というダンドリをこなすことを言う。早くて半年、通常は1年がかりという気の長いプロセスだ。ハーバードの学長は何を見るか
大学教員の人事体系と時間感覚は、それほどまでに世間一般とはかけ離れている。それが続いているのは、大学教員が通常業務とは異なる専門性を持っていて、そう簡単に穴埋めできないという事情によるものだ。ハーバードが学長面接で即断即決すると言っても、事前の候補者調査はもちろん行き届いていて、一流の研究者しかその場に現れない。学長は、その研究者が加わることによって学生に与える影響や場の活性化など、専門性とは別のフィルターを通して候補者を見るのだ。
大学教員にマネジメント力をつけるには
日本では「白い巨塔」方式が延々と幅を利かせている。制度的なしくみはあるのに、それを活用できる自信が大学教員の側にないのだと白石学長は指摘する。ビジネスマンのように「揉まれる」プロセスを経験しない大学教員は、専門的研究のみに専念すれば事足りたからだ。アメリカの大学にならって、40代あたりで「研究か、マネジメントか」を教員自身に選ばせる段階があれば、事情は変わる。2種類のキャリア・パターンが用意されることは、伸び悩む研究者にも大学全体にも朗報となる。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
陀羅尼品…あらゆるものが暗号であり、メタファーである
おもしろき『法華経』の世界(6)「陀羅尼品」とエニグマ
『法華経』下巻の「陀羅尼品」を読めば、それが真言宗の真言(=マントラ)と同様の構造を持っていることが分かる。天台教学における「諸法実相」や「本覚思想」という形而上学も、華厳経の「重々帝網」という次元世界も、全て...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/07/06
なぜ思春期は大事なのか?コホート研究10年の成果に迫る
今どきの若者たちのからだ、心、社会(1)ライフヒストリーからみた思春期
なぜ思春期に注目するのか。この十年来、10歳だった子どもたちのその後を10年追跡する「コホート研究」を行っている長谷川氏。離乳後の子どもが性成熟しておとなになるための準備期間にあたるこの時期が、ヒトという生物のライ...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/05
「言論の自由の侵害」と「移民排斥」はあまりに不合理
第2次トランプ政権の危険性と本質(7)言論の自由の侵害と移民排斥
多様性を尊重するリベラリズムとは逆行するトランプ大統領の動きは、人々の自由や司法の独立性を脅かすような横暴に向かっている。そのトランプが強く押し出す移民排斥の指針にも問題点が多い。経済、治安の観点から移民に関す...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/21
シフトワークによる脱同調に要注意…時差ボケへの対策は?
睡眠と健康~その驚きの影響(5)時差ボケと脱同調
シフト勤務者にとって避けて通れない問題がある。それは、時差ボケによる睡眠のリズムである。現在、日本では労働者の何割かがシフトワークに就いているが、この働き方では睡眠のリズムが崩れ、健康を大きく害する危険がある。...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/07/03
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05