テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.07.30

優先席でもOKに?広がるケータイ利用可能エリア

 優先席付近では携帯電話の電源をお切りください--電車を利用すると流れるお馴染みのアナウンス。この声が聞けなくなる日が来るかもしれない。。

総務省が定めた「15cm」という基準

 ペースメーカーの近くで携帯電話を使うと誤動作を引き起こす…というのは言わば「常識」となっている。優先席などで携帯電話の利用を制限する措置は、総務省の「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」にもどついたもの。

 この指針には、ペースメーカーなどの植込み型医療機器を使用している場合、携帯電話との医療機器の距離が「15cm程度以下にならないよう注意を払うこと」と定められている。

 この基準、2012年までは「22cm」だった。電波の出力が強かった旧来の携帯電話(2G:第2世代)が2013年に運用停止になったため、「15cm」に見直されたのだ。現在は3G/4G(第3世代/第4世代)の携帯電話が主流となっている。

一般生活で影響が起きるは可能性は「非常に低い」

 この指針が見直されたのが2015年6月23日。総務省が開催した「生体電磁環境に関する検討会」でのこと。

 指針の前提部分に追記があり、2014年度に行われた電子機器への影響調査について「電波利用機器の電波を規格上の最大出力で断続的に発射し、医療機器の感度を最大にするなど、極めて厳しい条件において実施しています」という記載がされた。

 しかし、調査のように最大出力・最大感度で機器を扱うことは極めてまれであり「一般生活において調査条件と同様の状況となる可能性は非常に低く、調査において影響が確認された距離まで電波利用機器が近接したとしても、実際に影響が発生するとは限りません。」と記述は続く。

 つまり「誤動作が起きる可能性がある」とされた状況は現実的ではなく、通常の使い方であれば影響は限りなく低いと言えるのだ。

関西の鉄道や病院は「利用OK」に

 昨年7月、関西の私鉄24社が加盟する関西鉄道協会とJR西日本は、優先席での電源オフ規制を止め「混雑時のみ」としている。緊急地震速報など、携帯電話の電源オフによるデメリットもあるとの判断だ。

 また、昨年8月には病院内での携帯電話利用も見直された。手術室や集中治療室など、医療機器が多い場所はこれまで同様にNGだった、待合室や病室での利用はOKとなった。これにより、入院患者がメールやネットを使うこともできるようになったのだ。

 いずれも、携帯電話が生活に不可欠になった現代を反映した措置といえる。しかし、だからといって携帯電話をあちこちで使っていいわけではない。2015年6月には、京浜東北線で優先席でのタブレット利用をめぐり、71歳の男性が刃物を取り出す騒ぎになった。「携帯機器はペースメーカーに影響がある」と不安を抱える人がまだ多くいることは決して忘れてはならない。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために

硫黄島の戦いでの奇跡的な物語を深く探究したノンフィクション『大統領に告ぐ』。著者の門田隆将氏は、「読者の皆さんには、その場に身を置いて読んでほしい」と語る。硫黄島の洞窟の中で、自分が死ぬ意味を考えていた日本人将...
収録日:2025-07-09
追加日:2025/08/15
門田隆将
作家 ジャーナリスト
2

日本は集権的か分権的か?明治以来の国家の仕組みに迫る

日本は集権的か分権的か?明治以来の国家の仕組みに迫る

「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念

今も明治政府による国家モデルが生きている現代社会では、日本は中央集権の国と捉えられがちだが、歴史を振り返ればどうだったのかを「集権と分権」という切り口から考えてみるのが本講義の趣旨である。7世紀に起こった「大化の...
収録日:2025-06-14
追加日:2025/08/18
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
3

原発建設には10年以上も…小型モジュール炉の可能性と課題

原発建設には10年以上も…小型モジュール炉の可能性と課題

日本のエネルギー政策大転換は可能か?(2)世界のエネルギーと日本の原発事情

再生可能エネルギーのシェアが世界的に圧倒的な伸びを見せる中、第7次エネルギー基本計画において原子力発電を最大限活用する方針を示した日本政府だが、それはどこまで現実的なのか。国際エネルギー機関が発表した今後のエネル...
収録日:2025-04-04
追加日:2025/08/17
鈴木達治郎
長崎大学客員教授 NPO法人「ピースデポ」代表
4

全ては経済?…米中対立の現状とリスクが高まる台湾危機

全ては経済?…米中対立の現状とリスクが高まる台湾危機

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(2)米中対立の現在地

世界第一、第二の経済力を誇る米中の対立は由々しい問題である。第1次トランプ政権下で始まった対立はバイデン政権に継承されてきたが、トランプ第2次政権では主題はもっぱら経済に集中している。われわれも米中協議の行方を注...
収録日:2025-06-23
追加日:2025/08/14
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授
5

なぜウェルビーイングが大事?DEIとの関係と価値の多様化

なぜウェルビーイングが大事?DEIとの関係と価値の多様化

DEIの重要性と企業経営(2)人的資本経営とウェルビーイング経営

今、企業の中に「人的資本経営」が急速に浸透している。経産省の定義によると、人的資本経営とは、人材を資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方のこと。類似する概念と...
収録日:2025-05-22
追加日:2025/08/15
山本勲
慶應義塾大学商学部教授