社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.08.03

車のメーター表示が180キロまでの理由

 国産の普通車の場合、スピードメーターは180km/hが一般的です。日本では特に標識や標示のない一般道の法定速度は60km/h、高速道路は100km/hから120km/hとなっています。高速道路での追い越しで一時的にスピードが上がることはあったとしても、ここまでのスピードに達することはないでしょう。ではなぜ国産車のスピードメーターの多くは180km/hとなっているのでしょうか。

180km/hは自主規制

 スピードメーターの表示が180km/hまでが多い点については、特に法律で決められているものではありません。一応の決まりと言えそうなものは、国産自動車メーカーからなる日本自動車工業会が定めた自主規制です。ではなぜその速度が180km/h(軽自動車は140km/h)なのでしょうか。

 1970年代に国産車の性能は著しく向上し、かなりスピードが出るようになりました。一方これと同時に交通死亡事故が多発する事態となります。このことで105km/h(軽自動車は85km/h)を越えると速度超過警告音(キンコンといった高い音)がなるようになったり、スピードメーターで一定速度以上が黄色や赤色で目立つようにされたりといった工夫が取り入れられます。こののち、さらなる規制が必要となったようです。

 こうして国内の自動車メーカーは180km/hを速度上限として燃料をカットして速度を抑える、「速度リミッター」を導入します。これと合わせてスピードメーターも180km/hとなったようです。これが180km/hとなった基準については諸説あるようです。日本自動車工業会によると、平均的な乗用車で高速道路の最大6%の勾配を100km/hで登るためには平坦な道路を180km/hで走れるパワーが必要とのこと。このことが180km/hを区切りとする根拠の一つのです。

180km/h越えのスピードメーターも増えている

 ただし、これは国産の一般的な車に限った話。輸入車では320km/h、260km/hといったものもあります。また過去の国産車ではトヨタ2000GT(1967年)は250km/h、日産の3代目スカイライン(通称ハコスカ:1968年)のスピードメーターは240km/hとなっています。さらに現在の国産車でも、主にスポーツカーに関しては特にこの限りではありません。たとえばマツダのロードスターは200km/h、日産GT-R(R35型)やレクサスRCFなどのスピードメーターは340km/hとなっています。

 輸入車の場合は速度に関する自主規制といったものはないので、その車の性能に応じたスピードメーター表示となっています。また、過去の日本車の場合も同様です。これに対して、現在の国産スポーツカーの場合、サーキット走行をすることが想定されたものと言えそうです。これらの車は状況に応じてスピードリミッターも解除できるようになっているとのこと。

 世界に向けて販売することを考えれば、日本国内でのローカルルールはやや分が悪いかもしれません。このことから最近はこの辺りのローカルルールは緩和されてきているようです。ともあれ、法定速度を越えて走行を続ければもちろん取り締まりの対象となります。また無理な追い越しやスピードの出し過ぎは大事故の原因です。どのような車であれ、まずは安全運転を心がける必要があることは変わりません。

<参考サイト>
車のメーター表示なぜ180キロまで? 制限以上の速度が出せる理由とは|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/155025/
日本車の速度メーター なぜ180km/h上限ではなくなったのか|ベストカーWeb
https://bestcarweb.jp/feature/column/328363
高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由|ITmediaビジネスONLINE
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2108/02/news047.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性

ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
3

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授