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全国でガソリンスタンドが減少しているわけ
全国的にガソリンスタンドの大幅な減少が続いています。給油のために少し遠くまで行く必要に迫られている人もいるのではないでしょうか。ではなぜガソリンスタンドは減少しているのでしょうか。また今後はどうなるのか、どのような対策があるのかといったところも見てみましょう。
マネー現代の記事によると、ガソリンスタンド数がもっとも多い都道府県は北海道で1,736カ所存在しています。2位は、愛知県の1,335カ所。また3番目に多い都道府県は千葉県です。一方ガソリンスタンドがもっとも少ない都道府県は鳥取県で207カ所、2位は奈良県253カ所、3位は福井県の265カ所となっています。
1位 群馬県 322 -35.5%
2位 千葉県 542 -34.8%
3位 東京都 450 -32.5%
4位 茨城県 469 -32.4%
5位 神奈川県 370 -31.5%
関東の都市圏でもかなり減少していることがわかります。ガソリン需要そのものが減少していることがうかがえます。もっとも大きな要因は、脱炭素社会に向けてハイブリッド車や電気自動車が普及してきたことが挙げられるでしょう。ハイブリッド車は劇的な低燃費を実現しました。また電気自動車は無料で充電できる場所もあります。いずれも環境への配慮だけでなく、ユーザーにとっては経済的にも好ましい状況だといえます。
加えて、ガソリンスタンド経営者の高齢化も背景にある大きな要因です。また、2010年に施工された改正消防法はガソリンスタンドの減少に追い打ちをかけました。この法律では埋設から40年以上経過したガソリンタンクに対して、漏洩防止対策を義務付けました。このための工事にはおよそ2,000万円近い費用がかかります。こうなると古いスタンドは改修するよりは廃業を選ぶことになります。
ガソリンスタンドは高齢者の多い地域に暖房用の灯油を運ぶなど地域のライフラインとしての役割や、災害時の防災ステーションとしての役割も果たしてきました。たとえば2004年の新潟県中越地震の際には、地域住民に石油製品を供給しています。また自治体との災害時協力協定などを結んでいるところでは、防災用品や消火器を貸し出し、緊急車両への燃料供給、周辺の災害情報や安否情報の提供、緊急物資の保管場所、といった災害時の重要な拠点となります。
このような状況受けて、資源エネルギー庁では「住民拠点サービステーション」として2022年2月末時点で1万4,669カ所のガソリンスタンドを指定しています。しかし、経営が赤字になれば、維持が難しいことは変わりません。こうしたことから、経産省はスタンドの集約や移転なども含めた対策を推し進めているようです。さらにこうした取り組みに加えて、公設ガソリンスタンドが設置されるようになってきました。この動きは全国の給油所過疎地で始まっています。
ガソリンスタンド数はこの30年で半分以下に
2017年度(平成29年度)末のガソリンスタンドの数は3万747カ所でした。これが2021年(令和3年度)末には2万8,475カ所となっています。この5年間は毎年およそ2%ずつ減少し続けています。もっと長いスパンで見ると、ピークだったのは1994年度(平成6年度)の6万421カ所でした。つまりこの30年弱でガソリンスタンドの数は半分以下になりました。さらにガソリンなどの販売業者(揮発油販売業者)は2017年度(平成29年度)末の1万4,612社から、2021年(令和3年度)末には1万3,008社に。ここ5年間では毎年平均3%程度、減少し続けています。また1989年度(平成元年度)は3万2,642社だったことからすると、60%以上の減少となっています。マネー現代の記事によると、ガソリンスタンド数がもっとも多い都道府県は北海道で1,736カ所存在しています。2位は、愛知県の1,335カ所。また3番目に多い都道府県は千葉県です。一方ガソリンスタンドがもっとも少ない都道府県は鳥取県で207カ所、2位は奈良県253カ所、3位は福井県の265カ所となっています。
ガソリン需要の減少要因
またこの10年でのガソリンスタンドの減少率が高いエリアは順番に以下の通り。数字は左が10年間の減少数、右が減少率です。1位 群馬県 322 -35.5%
2位 千葉県 542 -34.8%
3位 東京都 450 -32.5%
4位 茨城県 469 -32.4%
5位 神奈川県 370 -31.5%
関東の都市圏でもかなり減少していることがわかります。ガソリン需要そのものが減少していることがうかがえます。もっとも大きな要因は、脱炭素社会に向けてハイブリッド車や電気自動車が普及してきたことが挙げられるでしょう。ハイブリッド車は劇的な低燃費を実現しました。また電気自動車は無料で充電できる場所もあります。いずれも環境への配慮だけでなく、ユーザーにとっては経済的にも好ましい状況だといえます。
加えて、ガソリンスタンド経営者の高齢化も背景にある大きな要因です。また、2010年に施工された改正消防法はガソリンスタンドの減少に追い打ちをかけました。この法律では埋設から40年以上経過したガソリンタンクに対して、漏洩防止対策を義務付けました。このための工事にはおよそ2,000万円近い費用がかかります。こうなると古いスタンドは改修するよりは廃業を選ぶことになります。
防災の要としての役割も担う
こういった大きな変化によって「ガソリン難民」が増加しています。場所によっては自宅から最寄りのガソリンスタンドまでが15㎞以上あるといったエリアも存在しているようです。自治体内にスタンドが3カ所以下となっている「給油所過疎地」は、経産省の2017年3月末の集計で302市町村にのぼります。ガソリンスタンドは高齢者の多い地域に暖房用の灯油を運ぶなど地域のライフラインとしての役割や、災害時の防災ステーションとしての役割も果たしてきました。たとえば2004年の新潟県中越地震の際には、地域住民に石油製品を供給しています。また自治体との災害時協力協定などを結んでいるところでは、防災用品や消火器を貸し出し、緊急車両への燃料供給、周辺の災害情報や安否情報の提供、緊急物資の保管場所、といった災害時の重要な拠点となります。
このような状況受けて、資源エネルギー庁では「住民拠点サービステーション」として2022年2月末時点で1万4,669カ所のガソリンスタンドを指定しています。しかし、経営が赤字になれば、維持が難しいことは変わりません。こうしたことから、経産省はスタンドの集約や移転なども含めた対策を推し進めているようです。さらにこうした取り組みに加えて、公設ガソリンスタンドが設置されるようになってきました。この動きは全国の給油所過疎地で始まっています。
<参考サイト>
「最寄りのガソリンスタンドは家から20㎞」“ガソリン難民”続出の危機 ピーク時の半数が廃業|マネー現代
https://gendai.media/articles/-/98564
令和3年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました|経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/distribution/hinnkakuhou/220729a.html
なぜ地方で公設ガソリンスタンドが「急増」しているのか?|ビジネス+IT
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34541
「最寄りのガソリンスタンドは家から20㎞」“ガソリン難民”続出の危機 ピーク時の半数が廃業|マネー現代
https://gendai.media/articles/-/98564
令和3年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました|経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/distribution/hinnkakuhou/220729a.html
なぜ地方で公設ガソリンスタンドが「急増」しているのか?|ビジネス+IT
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34541
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