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DATE/ 2023.09.06

昭和の車には「しっぽ」がついていた?

 かつて、クルマのリアバンパーの下につり革を取り付けて走行、令和視点からするとかなりシュールな光景です。

 昭和時代にはそんなつり革だけでなく、尻尾のようなゴムベルトが取り付けられていました。

 令和の時代にあっても、「旧車っぽくてカッコいい」というようにそのエモさからか、昭和の時代に流行したカスタムとして装着走行しているケースも少なくないようです。

 中高年齢層といった年代を感じさせる話題ではありますが、今回は、なぜクルマにつり革など、ゴムベルトが取り付けられていたのか、その目的や理由についてせまってみましょう。

昭和の自動車、そのつり革事情とは?

 車内であればわかりやすいですが、なぜ、つり革がリアバンパーの下あたりにつけられていたのでしょう。

 理由は簡単で、クルマの帯電を路面に放電させるためのアースベルトのバリエーションとしてでした。

 アースベルトは、黒いベルトのようなパーツで、クルマの車体に帯電した静電気を地面に放電させるために装着されていました。

 そのアースベルトとしてつり革状のタイプが増えた理由には諸説あるようで、かつての暴走族など、クルマの窓枠から上半身を乗り出して走行する、いわゆる「箱乗り」が発祥ではないかと考えられています。箱乗りの際、振り落とされないようにつり革を装着したのが始まりで、そこから遊び心でバンパーに装着されたのではないかという説です。

アースベルトが無くなった理由は?

 アースベルトを装着するユーザーは、クルマの静電気が影響するアマチュア無線・カーオーディオを楽しむ方々、ドアに触れたときの静電気に悩まされている方など、それぞれに理由がありました。

 アマチュア無線愛好家によると車体周辺の電波状況が改善されクリアな通信が確保されたとのこと、カーオーディオ愛好家はオーディオノイズやラジオの電波ノイズが減少したとのことで、アースベルトはそれなりの評価を得ていました。

 しかし、1985年ごろから、アースベルトは静電気対策用品としての陰りを見せ始めます。その理由は、技術革新による別の静電気対策装置に移行したことによります。

 最新の自動車には、さらに事情が変わって、特別な静電気対策装置を設置することなく、タイヤがその機能を果たすようになっています。タイヤの素材であるブラックカーボンは電導率が高く、走っているだけで車体に帯電した静電気が放電されていくとのことです。

いまでも見かけるのは?

 機能的な面からほぼ生産中止になったアースベルトですが、近年において限定販売されているようです。

 つまり、カーアクセサリーとしては、まだその価値は認められ、昭和からの運転歴のある方々にはいまだに静電気対策グッズとして有用であると信じられていたり、令和の若者にとっては、昭和のエモさを体現するアクセサリーとして現役なのです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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