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DATE/ 2023.12.13

スゴい要約本『超有名な哲学書50冊を100文字くらいで読む。』

哲学史2500年の思考を1時間で学ぶ”――哲学といえば、なんだか難しそうとか、哲学書を読むのは大変といったイメージがあるかもしれませんが、そんな哲学の歴史的書物である哲学書50冊分、しかも超有名な哲学書を1冊ずつ100文字に要約し、1時間で学ぶことのできる新しい哲学入門書が上梓されました。タイトルは『超有名な哲学書50冊を100文字くらいで読む。』です。

 本書の著者である小川仁志先生は山口大学国際総合科学部教授で、商社マン、フリーター、公務員を経て哲学者となった、異色の経歴の持ち主です。小川先生の専門は公共哲学で、大学で課題解決のための新しい教育に取り組みながらも、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど市民のための哲学を実践し、ビジネス向けの哲学研修も多く手がけられています。また、100冊以上の著書を出版し、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努める一方で、YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも積極的に発信されています。

超有名な哲学書50冊を1時間で読む!

『超有名な哲学書50冊を100文字くらいで読む。』のコンセプトは、タイトル通り「まずは50冊の哲学書の名著を100文字ぐらいで読んでみよう!」です。

 本書の構成は、(1)名著を約100文字に圧縮した超要約、(2)なぜ名著なのかを一言で表した名著ポイント、(3)もっと知りたい人のための400字の補足解説、(4)著者である哲学者のプロフィール(または「表の顔」)とエピソード(または「裏の顔」)。1冊の哲学書を2見開き、4ページで紹介しています。さらに、イラストレーターの死後くんによる、哲学書のイメージをずばりと1カットで見せるヘタウマ風で実は奥深いイラストが描かれています。

 つまり、最低で50見開き、多くとも100見開きを読めば、超有名な哲学書の50冊分のエッセンスを一気に吸収できる仕組みになっています。

 また、100文字の超要約×50冊分=5,000字の超要約とさらに短い名著ポイントだけなら、ざっと読むだけなら1時間で読めるほど非常にタイパのよい一冊でもあります。

超有名な哲学書を2見開きで体感する!

 では、どんな哲学書が紹介されているのでしょうか。まず1章の「超有名な哲学書」では、『論語』(孔子)、『社会契約論』(ジャン=ジャック・ルソー)、『ツァラトゥストラかく語りき』(フリードリヒ・ニーチェ)、『幸福論』(バートランド・ラッセル)など。つづく2章の「時代を読みすぎな哲学書」では、『リヴァイアサン』(トマス・ホッブズ)、『エチカ』(バールーフ・デ・スピノザ)、『自由論』(ジョン・スチュアート ミル)、『人間の条件』(ハンナ・アーレント)などを紹介しています。

 さらに3章の「人生を狂わす哲学書」では、『群衆心理』(ギュスターヴ・ル・ボン)、『存在と無』(ジャン=ポール・サルトル)、『アンチ・オイディプス』(ジル・ドゥルーズ)、『なぜ世界は存在しないのか』(マルクス・ガブリエル)など。そして4章の「絶望と希望をくれる哲学書」では、『ニコマコス倫理学』(アリストテレス)、『人間知性論』(ジョン・ロック)、『死に至る病』(セーレン・キルケゴール)、『野生の思考』(クロード・レヴィ=ストロース)などを紹介し、巻末には超要約前の哲学書を読みたくなった人のための「オススメ文献リスト」も掲載されています。

 ここで、50冊のなかから1冊を取り上げてみましょう。プラトンが著した『ソクラテスの弁明』の1見開き目を開くと、100文字の超要約と「西洋哲学の歴史はこの本から始まったといっても過言ではない!」というポイント、さらに『ソクラテスの弁明』が哲学書のエピソードワンとして表現されたイラストがバーンと目に飛び込んできます。パっと見て読むだけなら、1見開き目は20~30秒もあれば可能です。

 1見開き目を読むと、きっと2開き目も読みたくなるはずです。そこでページをめくってみると、プラトンの「表の顔」と「裏の顔」が紹介されているのです。

「表の顔」とはプラトンのプロフィールについてで、「哲学の父ソクラテスの誕生秘話を描いたエピソードワン」とのキャッチコピーと400字の補足解説とともに、一つの書物も残さなかった師ソクラテスに代わり、多くの対話篇を著した古代ギリシアの哲学者プラトンが、ソクラテスの忠実な弟子としてプラトン哲学を後世に伝えるための重要な仕事を成し遂げたことにより哲学を学問として確立していった、という話が載っています。

 一方、「裏の顔」として、実はプラトンという名前は「肩幅が広い」という意味のニックネームであるといったエピソードなどが載っているのです。

 以上のように、「難解な哲学書を1分で読破!」とということで厳選された50冊の超有名な哲学書を2見開きで体感できる本書は、哲学についての知を広げる入口としてオススメの一冊です。ちなみに、入口があったら出口も必要となります。出口こそ次の入口ともいえます。小川先生が「あなたの人生に哲学を!」と呼びかけているように、50冊の一冊一冊を入口と出口にして、皆さんの哲学思考のために活用してみてはいかがでしょう。

<参考文献>
『超有名な哲学書50冊を100文字くらいで読む。』(小川仁志著、死後くん絵、イースト・プレス)
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781622309

<参考サイト>
小川仁志先生のHP
http://www.philosopher-ogawa.com/#Profile
小川仁志先生のツイッター(現X)
https://twitter.com/htsh1970
小川仁志先生のyoutubeチャンネル(小川仁志の哲学チャンネル)
https://www.youtube.com/channel/UC6QhXJZtGm7r287kam1Z1bg
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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