テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.05.01

Pepperデビュー直前に孫社長が猛反対したこととは?

 ソフトバンクショップに設置されたPepperを目にしたことがある人は多いだろう。

 しかしこの店舗設置を実現するにあたりソフトバンク社内で大きな論争があったことを蓮実氏が明かしてくれた。このエピソードの主役はあのソフトバンク株式会社、代表取締役社長の孫正義氏だ。

▼大勢を占めた「柵」設置論

 2014年にPepperが発表されたとき、いきなり他社の店舗に就職したら(設置されたら)想定外のことも起きて色々迷惑がかかるだろうということで、まずはソフトバンクショップに設置しようということになった。

 Pepperが子どもに怪我をさせたりしないよう、安全のためPepperの周りに「柵」を設置しよう。柵があれば混雑した店舗の中でも安全を確保できる。そういった意見が社内の大勢を占めていた。

▼「柵」設置論に猛反対した孫社長

 この意見に猛反対したのが孫社長だった。

 「柵は確かに安全だし何事も起こらないだろうが、それはちっとも未来を拓くことにならない。Pepperはいずれ家族になる。家族の周りに柵があるとはなんだ!絶対に許せない。もし柵をつけるなら、俺はもう今すぐソフトバンクを辞める!」と。

 この孫社長の猛反対を受けて柵の設置は見送られた。店舗内でのシミュレーションを何度も重ね、Pepperはようやくソフトバンクショップに就職することができたのだ。

▼孫社長がPepperに望んだこと

 蓮実氏は、Pepperに関する孫社長のエピソードをもう1つ明かしてくれた。

 Pepperと家族のふれあいについて話し合いをしていたときのこと。急に孫社長が、「Pepperが海を見たいといいだしたら面白いな」と言い出した。はじめは何をいっているのか全く理解できなかったが、後にこの一言は蓮実氏が最も感動した孫社長の言葉になっていく。

 これまでロボットは「人間の願いを叶えるもの」という発想ばかりだった。孫社長は「ロボットの願いを人間が叶えてあげてもいいじゃないか。本当の家族って、そういうものでしょ。」孫社長の発言は、そういう趣旨のものだった。

 Pepperを車にのせて海まで連れて行く・・・家族にとっては迷惑な話かもしれない。でもその迷惑を1回することによって家族がものすごく近くなる。素晴らしい思い出が1つできる。それが今までのロボットになかった価値になる。

 この発言を聞いた蓮実氏は発想を逆転させた。

 “Pepperに何ができるか?だけではなく、Pepperのために人間がしてあげられることがあるなら、それは積極的にやればいいじゃないか。Pepperが多少おっちょこちょいだったり、手間がかかっても、それが結果としてPepperを手放せなくなる最高の思い出になるのではないか”と。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

全ては経済?…米中対立の現状とリスクが高まる台湾危機

全ては経済?…米中対立の現状とリスクが高まる台湾危機

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(2)米中対立の現在地

世界第一、第二の経済力を誇る米中の対立は由々しい問題である。第1次トランプ政権下で始まった対立はバイデン政権に継承されてきたが、トランプ第2次政権では主題はもっぱら経済に集中している。われわれも米中協議の行方を注...
収録日:2025-06-23
追加日:2025/08/14
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授
2

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために

硫黄島の戦いでの奇跡的な物語を深く探究したノンフィクション『大統領に告ぐ』。著者の門田隆将氏は、「読者の皆さんには、その場に身を置いて読んでほしい」と語る。硫黄島の洞窟の中で、自分が死ぬ意味を考えていた日本人将...
収録日:2025-07-09
追加日:2025/08/15
門田隆将
作家 ジャーナリスト
3

なぜウェルビーイングが大事?DEIとの関係と価値の多様化

なぜウェルビーイングが大事?DEIとの関係と価値の多様化

DEIの重要性と企業経営(2)人的資本経営とウェルビーイング経営

今、企業の中に「人的資本経営」が急速に浸透している。経産省の定義によると、人的資本経営とは、人材を資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方のこと。類似する概念と...
収録日:2025-05-22
追加日:2025/08/15
山本勲
慶應義塾大学商学部教授
4

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025-06-19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
5

「はやぶさ」の川口淳一郎先生が語る「宇宙開発の歴史」

「はやぶさ」の川口淳一郎先生が語る「宇宙開発の歴史」

編集部ラジオ2025(17)「宇宙開発の歴史」を総覧!

小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーを務められた川口淳一郎先生。テンミニッツ・アカデミーでは、その川口先生に「未来を知るための宇宙開発の歴史」を縦横無尽にお話しいただきました。京都大学工学部から東...
収録日:2025-06-25
追加日:2025/08/14