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薬が多すぎる「うつ病治療」アプリを使った新たな治療法
五月病ともいわれるうつ病ですが、このうつ病は「心の風邪」ともいわれ、いつ誰がかかってもおかしくない病気です。ですが、その実態を正確に知っている人はそれほど多くないのではないでしょうか。
うつ病治療について、東京都内をはじめ福島県白河市などで心のクリニックを開設するひもろぎGROUP理事長で東邦大学薬学部客員教授の渡部芳德先生が、10MTVのなかでお話をされていますので、その内容をみていきましょう。
しかし、「私はうつ病です」と来院する人は少ないもの。気分の落ち込みや無気力よりも、体の不調を訴えて病院を訪れる人がほとんどで、実際に検査しても病気は見つからないのです。それが「器質的疾患のない身体症状病」と定義されるゆえんです。
うつ病患者の約6割は最初に内科を訪れ、最後に精神科を訪れるのが通例ですが、うつ病と確定的な診断のためには、「眠れない」「食欲がない」などの身体的症状に加えて、「気力がない」「考えがまとまらない」などの精神症状があることが決め手になります。
一方、渡部先生は、精神科での一番の問題として「非常に多くの薬剤を処方する多剤併用」を挙げています。
“われわれは1剤、2剤とか、平均2剤ちょっとぐらいで治療していますけれども、実際非常にたくさんのお薬を飲んでいる方が、セカンドオピニオンを求めてわれわれのクリニックに来られています。(中略)実際に患者さんが薬局に行って、「こんなに薬を飲んでも死なないんでしょうか。大丈夫なんでしょうか」と聞いたときに、薬剤師さんは何と答えていいか分からなかったというぐらいに、非常に数が多いということです。
これは、何も精神科医がたくさん薬を飲ませたいというのではなく、症状をよくしたいという表れでしているのでしょうけれども、やはりたくさんの薬を併用されている患者さんもおられるということです。国は、数を減らすということで薬剤規制を最近行うようになりましたが、非常にたくさんの薬を処方されていると実感している人が多いのではないかなと思います。”
このスケールをさらに発展させた画期的なシステムがアプリ「アン‐サポ」。これは無料のもので、iPhone、iPad 、Android で利用可能。実際に、現時点(2015年)で2万人ほどの方が利用しており、全国からデータを集積して、さらに詳しい解析ができるようになったそうです。
たとえば、データを分析して地域別の割合を見ると、全国に分布している中でも東京圏の利用者が非常に多く、9441人のデータを解析したところ、この「アン‐サポ」の利用者数と都道府県別の自殺者数の割合が一致しているということが明確になったというのです。
さらなる「アン‐サポ」の可能性について渡部先生はこう言います。
“「アン‐サポ」で一体何ができるかというと、一つには、患者さんが自分で入力して、「アン‐サポ」のデータを介在に主治医と薬剤を減らすことができ、また、「アン‐サポ」により、目に見えない精神疾患を視覚化することで、本人のみならず医師や家族にもそのつらさを伝えることができるのです。”
つまり「アン‐サポ」の利用によって患者自身が自分の状態を把握し治療の励みにしたり、データの集積・解析で明らかになった事実をもとに自殺予防に役立てるといった可能性が考えられます。
渡部先生が言うように、将来的には、カウンセリングサービス、薬剤の減量および自殺者の減少、新しい治療法の開発などにつながっていくことを期待したいですね。
うつ病治療について、東京都内をはじめ福島県白河市などで心のクリニックを開設するひもろぎGROUP理事長で東邦大学薬学部客員教授の渡部芳德先生が、10MTVのなかでお話をされていますので、その内容をみていきましょう。
「私はうつ病です」と来院する人は少ない。なぜか?
うつ病や躁うつ病を代表例とする「気分障害」の患者さんは国内に100万人いるとみられています。会社勤めの人に限ると、ほぼ5パーセントがうつ病の薬を飲んだり通院しているはずだと、渡部先生は言っています。一方で、21世紀に入ってからの日本の自殺率は、3万人を超えたレベルで推移。ここにも「うつ」の影は色濃く存在します。しかし、「私はうつ病です」と来院する人は少ないもの。気分の落ち込みや無気力よりも、体の不調を訴えて病院を訪れる人がほとんどで、実際に検査しても病気は見つからないのです。それが「器質的疾患のない身体症状病」と定義されるゆえんです。
うつ病患者の約6割は最初に内科を訪れ、最後に精神科を訪れるのが通例ですが、うつ病と確定的な診断のためには、「眠れない」「食欲がない」などの身体的症状に加えて、「気力がない」「考えがまとまらない」などの精神症状があることが決め手になります。
精神科での問題は、飲む薬が多すぎること
抗うつ剤の進歩に伴い、現在では典型的なうつ病の場合だと平均8週間で症状が軽快していきます。治療の流れとしては、およそ3カ月~半年で薬の服用を止め、その後は経過観察に入ります。初めて変調を来した人の場合、1年以内に治る人がほとんどだといいます。一方、渡部先生は、精神科での一番の問題として「非常に多くの薬剤を処方する多剤併用」を挙げています。
“われわれは1剤、2剤とか、平均2剤ちょっとぐらいで治療していますけれども、実際非常にたくさんのお薬を飲んでいる方が、セカンドオピニオンを求めてわれわれのクリニックに来られています。(中略)実際に患者さんが薬局に行って、「こんなに薬を飲んでも死なないんでしょうか。大丈夫なんでしょうか」と聞いたときに、薬剤師さんは何と答えていいか分からなかったというぐらいに、非常に数が多いということです。
これは、何も精神科医がたくさん薬を飲ませたいというのではなく、症状をよくしたいという表れでしているのでしょうけれども、やはりたくさんの薬を併用されている患者さんもおられるということです。国は、数を減らすということで薬剤規制を最近行うようになりましたが、非常にたくさんの薬を処方されていると実感している人が多いのではないかなと思います。”
うつ病と自殺の関係性が明確に。アプリ「アン‐サポ」の可能性
そこで渡部先生の診療では、自己記入式のうつ病と不安症状のスケールを活用することにしています。このスケールを使うことで、患者さんのデータが蓄積されて治療に役立てることができ、また薬を多く飲んでいる人ほど症状が悪いということもこのデータからわかったことの一つです。このスケールをさらに発展させた画期的なシステムがアプリ「アン‐サポ」。これは無料のもので、iPhone、iPad 、Android で利用可能。実際に、現時点(2015年)で2万人ほどの方が利用しており、全国からデータを集積して、さらに詳しい解析ができるようになったそうです。
たとえば、データを分析して地域別の割合を見ると、全国に分布している中でも東京圏の利用者が非常に多く、9441人のデータを解析したところ、この「アン‐サポ」の利用者数と都道府県別の自殺者数の割合が一致しているということが明確になったというのです。
さらなる「アン‐サポ」の可能性について渡部先生はこう言います。
“「アン‐サポ」で一体何ができるかというと、一つには、患者さんが自分で入力して、「アン‐サポ」のデータを介在に主治医と薬剤を減らすことができ、また、「アン‐サポ」により、目に見えない精神疾患を視覚化することで、本人のみならず医師や家族にもそのつらさを伝えることができるのです。”
つまり「アン‐サポ」の利用によって患者自身が自分の状態を把握し治療の励みにしたり、データの集積・解析で明らかになった事実をもとに自殺予防に役立てるといった可能性が考えられます。
渡部先生が言うように、将来的には、カウンセリングサービス、薬剤の減量および自殺者の減少、新しい治療法の開発などにつながっていくことを期待したいですね。
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