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DATE/ 2016.05.27

「ペットボトルの水」はなぜあんなに高いのか?

 ペットボトルの水が、水道水よりも価格が高いことは当然ご存じでしょう。では、価格がどのくらい違うのかを知っているでしょうか。それを知ってしまったら、ペットボトルを買い控えるようになるかもしれません。

ペットボトルの水は水道水の1000倍高い

 水道水がいくらするかというと、上下水道で1000リットル当たり170円ほどです。対してペットボトルは、たとえば1リットル200円とすると、1トン(1000リットル)で20万円になります。つまり、ペットボトルの水は、水道水の約1000倍の値段なのです。水道水とペットボトルはこれほど価格が違います。ペットボトルに比べたら、水道水はほとんどタダみたいなものなのです。

ペットボトルの水が高い理由とは?

 では、なぜこれほど価格が違うのでしょうか。

 東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏によれば、理由ははっきりしていて、輸送費が高いからだそうです。たとえば、大阪~東京間を運ぶのには、1トン当たり1万円ほどかかります。100円、200円の水道水を1万円かけて運んでしまえば、それはもう水道水と同じようには使えません。逆にいうと、ペットボトルはそういったコストが乗っているから、あの値段だと思った方がよいでしょう。ペットボトルの価格の多くは輸送費なのです。

 ペットボトルの水が高い理由は、ほかにもあります。水ビジネスが難しいからです。沖氏はこう話しています。

 “水に対しては、どの国の人も単なるサービス事業以上の感情を持っています。外国資本が水を扱うことに反感を持たれないように、優れたサービスを提供し、感謝されつつ料金をいただくという関係を保つことが絶対に必要です。(中略)水だけは、口にするものだから、健康に大きく関係があるから官が担ってほしいという意識が世界的に強いのです。これは感情的な話です。その点にも注意する必要があります。”

 つまり、大量の水を輸出入して、安価にビジネスするといったことは難しいということです。沖氏は、「海外で民間が水道事業を担う際は、必ずしも順風満帆にいかないことを知るべき」と言っています。

水はグローバルな財になりえない

 ですから、水は決してグローバルな財にはなりえません。ローカル財なのです。他国が水不足で苦しんでいるからといって、水を大量に輸出するのは難しいでしょう。それどころか、北海道と沖縄の間でさえやり取りは大変なのです。水を扱うときの難しさのひとつが、ここにあるということです。
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