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DATE/ 2016.06.13

名医が語るアトピーのかゆみを抑える2つの方法

 強いかゆみで多くの人を悩ます「アトピー性皮膚炎」。今回は、「難治性のかゆみ」の第一人者である順天堂大学大学院医学研究科皮膚科学特任教授の髙森建二先生に、アトピー性皮膚炎の特徴とその治療法についてお話をお聞きしました。

アトピー性皮膚炎の原形は皮膚の乾燥

 髙森先生は、「アトピー性皮膚炎の原形は皮膚の乾燥」だと言います。かゆくて引っかいているうちに湿疹化して、それがアトピー性皮膚炎の症状になるということです。

 ではなぜ皮膚は乾燥すると、かゆくなるのでしょうか。

 髙森先生によると、乾燥した皮膚は敏感肌になり、それが皮膚のバリアが壊れた状態だそうです。このバリアは、外から異物が入ってこないような働きと、水分を外に出さない作用を持っています。バリアがしっかりしている人は水分が保たれて肌がしっとりとした状態なのに対し、アトピー性皮膚炎の人はバリアが壊れているので水分が外へ出てしまう。そのため乾燥して、非常にかゆくなるということです。髙森先生はこう続けます。
 
 “この原因は、神経線維にあります。かゆみを感じる神経線維は、正常な場合には皮膚の中の方、すなわち表皮と真皮の境界部で終わっています。しかし、乾燥肌になると、神経が皮膚の表面近くまでずっと伸びてくるのです。このような状況になると、外部からのわずかな刺激で神経は興奮して、かゆみが起きるということになります。これが、いわゆる乾燥肌によるかゆみの原因であると言っても過言ではありません。”

アトピーのかゆみをストップする2つの方法

 それでは、どうすればこのようなかゆみを抑えることができるのでしょう?髙森先生は、2つの方法があると言います。

 “ひとつは、紫外線照射です。昔から、アトピー性皮膚炎は海に行ったり、紫外線に当たったりすると、かゆみが止まってよくなることが知られていました。ただし、その原因が分からなかったため、私たちはいろいろ調べました。その結果、紫外線を当てると、皮膚の中に入っている神経線維が表皮から真皮の方に戻る「退縮」という現象を起こすことが分かりました。かゆみを抑制するメカニズムです。現在では、アトピー性皮膚炎の人に紫外線を照射するPUVA療法やナローバンドUVB療法などが、かゆみを止める治療法として用いられています”

 そして、もうひとつは保湿剤。

 “アトピー性皮膚炎で炎症が強いときには、ステロイド軟膏を塗ることで炎症を抑えます。そうすると、残るのは乾燥肌です。この時に神経線維の表皮内侵入が起こっていますから、敏感肌にもなっています。ここに保湿剤を塗ることで、表皮内に入っていた神経がまた真皮の方に戻っていくことが分かりました。保湿剤は、かゆみを止めるための非常に重要な治療法になるのです。”

 保湿剤を塗ることで、神経繊維が皮膚の表面から元の位置に戻るというメカニズムだそうです。そのため、アトピー性皮膚炎のかゆみも抑制できるのです。

 いかがでしたか。紫外線照射と保湿剤の塗布という2つの方法が、アトピー性皮膚炎のかゆみと掻破(そうは)の悪循環を断ち切ってくれるという点は、ぜひ覚えておきたいですね。
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