テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.12.17

ニワトリがオスなしで卵を産めるのはなぜ?

 2017年は酉年。酉(トリ)と言ったら、まず思いつくのが鶏(ニワトリ)ではないでしょうか。普段の食事に欠かせない鳥肉や卵、また畜産の面から見ても、ニワトリは日本人にとって、とても身近な動物。今回は酉年にちなんで、鶏(ニワトリ)にまつわる雑学をご紹介します。

そもそも「酉」って、どんなトリなの?

 「酉」とは十二支では10番目にあたる干支です。この十二支というのは、時をあらわす単位のようなもので、その10番目が「酉」という数字だと考えるとわかりやすいはず。毎年11月の酉の日に酉の市へ出掛ける人も多いですが、酉年があるのと同じように、酉の月や酉の日、酉の刻もあるわけです。

 この数字にあたる干支を憶えやすくするために、それぞれに親しみやすい動物をあてはめることになったそう。ですから、酉=鶏と、庶民にとって一番身近な鳥であるニワトリが酉年の「酉」としてのイメージを定着していきました。

「コケコッコー」は、悲しいオスの叫びなのか

 ニワトリといったら、まず思い浮かぶのは「コケコッコー」という鳴き声ですが、実はこの鳴き方をするのはオスだけ。メスは「コッコッ」と泣くくらいで、オスは縄張り争いやメスへのアピールのため、「コケコッコー」と文字通り雄叫びを上げるのです。

 その雄叫びは夜明けだけでなく、昼間から夕刻まで発せられます。ニワトリは暗くなると目がよく見えませんから暗くなると就寝し、光を感じる朝まで静かになるという説や、また、ニワトリには独自の体内時計があるという説も最近では濃厚になっています。鳥が古来から時を告げる動物の象徴とされてきたことにも、根拠があるようです。

 しかしこのオス鶏、もちろん卵が生めないわけで、殻から出てヒヨコになり性別判定ができるようになると、すぐに処分されてしまうこともあるという悲しい現実も。生き延びたオスだけが雄叫びを上げられる、とも言えるのです。

オスなしでも産めるメス。その卵には2種類あります

 一方、オスと違い、卵を産めるメスは重宝されます。メスの寿命は10年~20年ほどで、卵を産める期間は7~8年。全盛期は毎日のように産卵するので年間300個ほどになります。しかし、1年ごとに産卵数が減っていき、最後は1年で20個産めるかどうかになり、そうなる前に食用にまわされます。

 したがって、養鶏場にいるニワトリは全部がメスなのです。オスがいなくてもメスは卵を産めるのですが、それは、人間の女性に例えるなら、産卵=出産ではなく、「排卵」にあたるため。

 もしオスと交尾をして産卵したならば、その卵は「有精卵」になり、受精のないまま産まれた卵が「無精卵」となります。なんとなく、命の元が入っている有精卵の方が栄養価が高いようなイメージがありますが、ほぼ変わりはありません。有精卵は温度管理などが難しく、変質しやすい点もあり、一般的に流通しているのはほぼ無精卵。

 しかし、有精卵は、生きた細胞を持っているため、インフルエンザワクチンのウイルス培養などに使われており、わたしたちの生活の役に立ってもいるのです。

 毎日のように食卓に上がる卵や鶏肉は、わたしたちにとって馴染み深く、とても身近なもの。酉年を迎えるにあたり、あらためて命のありがたさに感謝し、大切にいただきたいものですね。

<参考サイト>
・日本養鶏協会
http://www.jpa.or.jp/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
3

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
4

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
5

狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き

狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す

ヒトは、そもそもの生き方であった狩猟採集生活でも子育てを分担してきた。それは農業社会においても大きくは変わらなかったが、しかし産業革命以降、都市化が進み、貨幣経済と核家族化と個人主義が浸透した。ヒトが従来行って...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/09/14
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長