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DATE/ 2017.01.16

なぜ「松竹梅」でランクが違うのか?

 よく日本料理のコースで選択することになる「松竹梅」はみなさん、ご存じだと思います。やっぱり豪華なものは松、梅はひかえめという印象がありますよね。しかし、実はこの三種にはもともと序列がありませんでした。

 ではどうして料理でランクが違うのか、何をもって「松竹梅」と付けられたのか、ちょっと調べていきましょうか。
 

松・竹・梅の意味―「歳寒三友」とは

 「松竹梅」の起源は中国にあるといいます。「歳寒三友」と呼ばれるものです。宋の時代に始まった文人画の画題の一つで、冬の寒さのなか、松は緑色を保ち、竹はすくすくと伸び、梅は花を開くということから好んで描かれたのだといいます。

 「歳寒」のルーツは孔子の『論語』にあります。極寒の中で松が緑のつややかさを保つさまに目を向けられています。厳しい環境のなかで変わらぬ志をもつ、清廉潔白であることの象徴である「松竹梅」は、中国の文人(学を修めた士大夫)の理想を表現するのにふさわしいものだったかもしれません。画題として描かれていたこれらの植物は長らく愛され、陶器や建築の文様に組み込まれていったといいます。おめでたいものというよりも、人間の生き方を表すような意味合いがあったのですね。

日本における「松竹梅」

 さて、「歳寒三友」がいつ中国から伝わったのかについては定かではありません。しかし「松竹梅」は、中国とはまた違った意味合いで大事にされる植物でした。松は神が宿る樹木とされ、「節操」「不老不死」の象徴、竹は次へ次へと新芽が出、まっすぐ伸びていくようすから「子孫繁栄」の象徴、梅は寒くても花咲く「気高さ」と「長寿」の象徴とされています。
 
 「歳寒三友」が伝わってしばらくはこのような序列がなかったそうですが、江戸時代に蕎麦屋、寿司屋などが「特上」「上」「並」という呼び方を美しくしようと「松竹梅」をあてはめたのが順番の由来となった、といわれています。縁起物として扱われるのは日本独自なのですね。

日本において松が特別とされる理由

 お店によっては梅が一番上とされる場所もあるそうですが、一般的には松が一番上等です。日本で、松という植物は、特別な意味を持っています。

 神事では、松は神様をお迎えし、邪気を払う力をもつとされるそうです。「門松」の風習もありますね。松・竹・梅、どれもめでたく縁起のよいものですが、古来からの日本の考え方と組み合わせたとき、「松竹梅」の中では特に重要視されるものだったのかもしれません。

どれも大切にしたい

 ということで、中国から伝わり、しだいにその意味が変化していった「松竹梅」ですが、日本ではどれも深い意味を持つ、吉祥の植物とされているのです。こうして、もともとの意味を知ると、縁起物として見るときもより心から愛することができるのではないでしょうか。「松竹梅」どれも大切にして、日本の古き良き伝統をつないでいきたいですね。
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