吉田松陰の思想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
孟子の易姓革命論をいったん批判したうえで継承する
吉田松陰の思想(下)松陰の思想の中核(3)革命観と性善説 
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
吉田松陰は、たとえ聖人の書いた著作でもそれにおもねるなと言う。それは、孔子や孟子の生き方が、松陰なりの「忠」の考え方と衝突するからだ。東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が、中国と日本の違いを意識しつつ、独自の『孟子』読解に取り組み、新たな可能性を切り開こうとした松陰の思想を『講孟余話』を手引きに語る。シリーズ「吉田松陰の思想」第8回。
時間:13分36秒
収録日:2015年2月26日
追加日:2015年8月6日
≪全文≫

●我こそが孟子を読むことができる


 せっかくの機会ですので、『講孟余話』を少しだけ読みたいと思います。その序文にはこんなことが書かれています。

 “孟子は聖人の亞(※)なり、その道を説くこと著明にして人をして親しむべからしむ。世、蓋(けだ)し讀(よ)まざるなし。”
 ※次、二番目、準じているということ。

 孟子は聖人に匹敵するものである。だから、その説く道に対しては、皆、親しんでいくものであり、読まないわけにいかないのだ、ということです。これは、孟子のある種の普遍性に関わる問題を提起しています。ところが、こう言います。

 “讀みて而(しか)も道に得る者、或は鮮(すくな)し。何ぞや。”

 読んでも道を得ることができる者は少ない。どうしてなのか。ここで松陰は次のように言います。

 “富貴貧賤、安樂艱難の累(わずら)はす所となりて然るなり。”

 人間には、自分が置かれている条件がある。そのため、なかなか『孟子』をきちんとつかまえることができない。特に「富貴」「安樂」といった「順境」にある人はそれができない。自分のように、「艱難」「貧賤」といった「逆境」にある者こそが、『孟子』を読むことができる。松陰は、こういう言い方をしています。非常に松陰らしい口吻だと思いますが、これは通常の状況にいる人が『孟子』を読むことなどできるのだろうかという問いを出しているわけです。

 松陰は、こんなことも言います。

 “孟子の説は固(もと)より瓣(べん)を待たず。然れども之を喜びて足らざれば乃ち之を口に誦(よ)み、これを誦みて足らざれば乃ち之を紙に筆す。亦情の已(や)む能(あた)はざる所なり。”

 松陰は、われこそが『孟子』を読むことができると言います。そのとき、『孟子』を読んで喜びが湧いてきます。そして口に出して読む。それでも十分ではないと思えば紙に書く。「情の已む能はざる所なり」、つまり、非常に実存的に『孟子』を読み、『孟子』に迫るということです。普通の注釈家が『孟子』を読む態度とは全く違う態度を、松陰は「序」で述べているのです。


●ただ孟子を継承しているわけではない


 恐ろしいのは、その冒頭です。原文もあるのですが、松本三之介先生・田中彰先生・松永昌三先生が行った非常にいい翻訳があるので、それを基にしてお話をしたいと思います。

 『講孟余話』の最初で、松陰はこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
メソポタミア神話の基本を知る(1)メソポタミア神話の神々と人間との関係
メソポタミア神話は、ギリシア神話はじめ世界の神話の原点
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
石田梅岩の心学に学ぶ(6)禅から茶道へ
全てが悟りに至る道…日本は茶や花や野球にも「道」がある
田口佳史
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎