吉田松陰の思想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
丸山眞男が吉田松陰に見出したナショナリズム
吉田松陰の思想(上)松陰像の変遷(4)宗教性とナショナリズム
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
さまざまな吉田松陰像に共通するのは、絶対的な者に対する没我、すなわち宗教性である。それが戦前では熱狂的な国家主義に「悪用」されたが、それを超えた「健全なナショナリズム」へと進む可能性もあったのではないか。奈良本辰也氏の著作、丸山眞男氏の論文を手引きに、東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が、松陰の思想の知られざる潜在性を明らかにする。シリーズ「吉田松陰の思想」第4回。
時間:13分00秒
収録日:2015年2月26日
追加日:2015年7月23日
≪全文≫

●奈良本辰也の松陰像(2)松陰の中の宗教性


 ところが、奈良本辰也先生が『日本の思想 吉田松陰集』(1969年)をまとめた際に出された松陰像は、それまでとはまた違う松陰です。これは非常に面白い松陰像ですので、紹介したいと思います。こんなことを言っています。

 “むしろ非合理的なもの、神秘的なものこそが、その中心にこなければならないのである。ヨーロッパならば、キリスト教の神がその中心に座を占めることができた。しかし、わが国では宗教はあまりにみじめにたたきのめされていたのだ。近世の儒教的インテリゲンチャーは、すべて無神論であり、排仏論者であった。人々が頼るべき神々の多くは、ただ世俗の信仰として、大衆のなかに眠っていたのである。

 だから、松陰の思想が人々の上に絶対的な統一の原理を探り出そうとすれば、そのような神話であり、天皇の絶対的な信仰であった。”

 もちろん、松陰の国体の思想は喧伝されていくわけですが、その松陰の中にある種の宗教性を見ると言っているのです。それが、ある方向に強調されることで、熱狂的な国家主義につながっていったのだと書かれています。しかし、同時に、別の方向に行くこともできたのではないか。おそらくそういう感覚を、奈良本先生は持っていたのだろうと思います。

 私は、これが非常に大事なポイントだと思っています。時務を論じたり、教育家であったり、歴史家であったりする、それはそれで、松陰の像を表していると思うのですが、だとすれば松陰がなぜあそこまでパッショネイト(熱狂的)な仕方で状況に介入していくのかという疑問に対する根拠がないといけないと思うのです。

 奈良本先生が考えたのは、ここではキリスト教の神に匹敵するものだと言っていますが、何らかの宗教性が松陰にはあったのだろうということです。ところが、その宗教性を、日本は江戸の末期や明治でもそうでしたが、抑圧をしていました。松陰はそこに触れていたのではないか。それが悪い方向に行ってしまうと国家主義になってしまうが、そうならないやり方もあったのではないのかということです。これは、重要な指摘だと思っています。


●丸山眞男の松陰論─ナショナリズムとして読む


 このことは、実は丸山眞男の松陰論にも関わってきます。あるいは、丸山の松陰論から奈良本先生が影響を受けた可能性の方が、私は大きいのではないかとい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
一ノ瀬正樹
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(13)心の「柔軟性」を高めるヒント
【10minでわかる】心の「柔軟性」を高めるヒント
テンミニッツ・アカデミー編集部
昭和の名将・樋口季一郎…ユダヤ人救出編(3)救った人数とゴールデンブックの謎
樋口季一郎のユダヤ難民救出数は?ゴールデンブックの謎は?
門田隆将
「逆・タイムマシン経営論」で磨く経営センス(1)人口問題の本質
「逆・タイムマシン経営論」は本質を見抜くための方法論
楠木建
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
川上浩司
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
生き抜くためのチカラ~為末メソッドに迫る(4)人生の勝敗を考える
幸せの鍵「なにげなさ」とは何のことか
為末大
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏