吉田松陰の思想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
決断主義的な主権者性を天皇に期待していたことの矛盾
吉田松陰の思想(下)松陰の思想の中核(2)国体と天皇
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
吉田松陰の『講孟余話』は、孟子の革命観を否定しつつも、当時の徳川政権を批判する可能性を残していた。さらに松陰は、天皇に決断主義的な「主権者」像を提示した。守旧的な「国体」論者から積極的な政治的統治者へというラディカルな松陰像の転換を、野口武彦氏の著作を手引きに、東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が描く。シリーズ「吉田松陰の思想」第7回。
時間:10分16秒
収録日:2015年2月26日
追加日:2015年8月3日
≪全文≫

●松陰の兵学眼があってこそ


 それでは『講孟余話』に入りたいと思います。吉田松陰は、安政2(1855)年6月に野山獄で『孟子』の輪講を開始し、翌安政3(1856)年3月に講読を終了したそうです。『講孟余話』、別名『講孟箚記』は、安政3年6月に完成していますので、読み始めてわずか1年で書き切った本ということになります。

 管見の限りでこの『講孟余話』について深く切り込んだのは、野口武彦先生の本だろうと思います。『王道と革命の間 日本思想と孟子問題』(1986年)という本です。この中で野口先生は、松陰にとって孟子の思想とは何だったのかということに相当深く踏み込んでいます。野口先生の議論を簡単に紹介したいと思います。

 “松陰が『孟子』を読みやぶったのは、よくいわれるように国体論の一点にあったのではない。その炯々(けいけい)たる兵学眼(※1)が『孟子』の行間紙背をつらぬいたところにこそ、この経学書(※2)をそれ以上にアクチュアルな書物として読みぬいた秘密があったのである。”
 ※1:吉田家を継ぐ時、吉田松陰は兵学を修めていたが、それに触れて「その炯々たる兵学眼」と言っている。
 ※2:『孟子』のこと

 これは非常に面白い捉え方だと思います。野口先生は他にも、『江戸の兵学思想』(1991年)という本を書いていて、そこでも松陰を扱っていますので、詳細はそちらをお読みいただければと思います。


●新しい性質の「革命」の問題提起


 あと二つ、読みたいと思います。国体の問題、そして革命の問題に触れたところで、野口先生はこんなことを言っています。

 “日本の朝廷は、天照大神の子孫が天壌無窮に皇統を伝えているものであって、天が命じ、また天の廃した前王朝を討って易姓革命を行う中国とは異なる。ここまでの主張は、同時代の水戸学にもあった皇朝主義的歴史観の考え方である。しかし、松陰の思考の特色は、彼我の差異(※1)をもはや普遍的な可否の問題としては考えず、漢土(※2)の易姓革命論のことは当初から議論の埒外におくというかたちで、比較それ自体を拒否しながら出発した点にある。そして、そのことは、松陰がここにまったく新しい性質の「革命」の問題を提起しつつあることを意味している。「征夷をして足利氏の曠職(こうしょく)(※3)の如くならしめば、直ちに是れを廃するも可なり」。これは明らかに、現...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
インド神話の基本を知る(1)インドの特性と神話の成り立ち
インド神話…『リグ・ヴェーダ』『マハーバーラタ』の壮絶な物語
鎌田東二
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(8)『オデュッセイア』の世界的影響
オデュッセイアが物語のフォーマット?…アラビアンナイトから百合若物語、ひまわりまで
松村一男
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎