吉田松陰の思想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「天道と国体」の関係は「普遍と特殊」
吉田松陰の思想(下)松陰の思想の中核(4)同と独の調停
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏は、吉田松陰の思想の内には、現在の世界情勢に通じる側面があると分析する。各国が持つ特殊性を尊重しながらも、そこからどうやって万国共通の普遍性を見出していくか。『講孟余話』を引きながら、松陰がたどり着いた「普遍と特殊」問題について中島氏が語る。シリーズ「吉田松陰の思想」第9回。
時間:11分06秒
収録日:2015年2月26日
追加日:2015年8月10日
≪全文≫

●松陰は「誠」を原理として据える


 性善の議論にもつながってくるもので、「誠(まこと)」という概念があります。松陰はそれを大変重んじており、「誠」に関してこんなことを言っています。

 “根本にさかのぼって考えてみるのに、人間にとって本質的なものはただ一つ誠である。この誠をもって、父につかえれば孝となり、君につかえれば忠、友に交われば信となる。同様に名称は千百と異なっても、つまるところ一つの誠に帰するのである。”

 松陰は、非常に原理的な思考ができてしまう人なのですね。現象はいろいろと異なって見えるかもしれないが、しかしそれは、根本的な原理(この場合は「誠」)に帰着させることができるということです。そこから見ると、彼にとってはそれが批判の根拠になっていくわけです。ただ「誠」であればいいとぬるいことを言っているわけではなく、「誠」を原理に据えるというところまで、思索を深めることを要求するわけです。朱子学や陽明学も、「誠」に関して非常に形而上学的な議論をしていきますが、その点を思想の強度において継承していきます。そういったことが、松陰はできたのだろうと思います。それを自分なりに咀嚼して、自らの原理として使っていったのだろうと思います。


●「独」と「同」


 もう一つだけ、『講孟余話』からお話ししようと思います。大事な部分なので、長く読みたいと思います。

 孟子が食べ物の話をしている部分があります。食べるということは、哲学的に重要なテーマなのです。こう言っています。

 “膾炙(かいしゃ、※1)のように世間一般の人が好んで食べるものを食べ、羊棗(ようそう、※2)のように特に好きな人しか食べないものは食べない。姓(かばね)のように共通のものははばからないが、名のように特定の人にかぎられるものははばかる。これが孟子の考え方である。孟子が道を論ずる論じ方は、じつに精密だといわなければならぬ。この問題をもう少し拡げて詳しく説明させてもらおう。”
 ※1:なますと、あぶり肉のこと。
 ※2:なつめのこと。

 そして、こう続きます。おそらくここがポイントだと思います。

 “道は天下公共の道であるから、いわゆる同である。国体は一国の独自のあり方を示すものだから、いわゆる独(※)である。君臣・父子・夫婦・長幼・朋友の五者は、天下に共通の関係であるから同である。一方、わが皇国...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
編集部ラジオ2026(36)宮脇淳子先生「満洲史」講義の要点
【10min解説】「満洲史」はタブー?…そこから見えてくる教訓とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
優れた経営者の条件(1)スキルとセンスの違い
経営者のセンスは担当者のスキルとは全く違う
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環