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建築はみんなのお祭り、素人も手を出せるのが木造の魅力

森と都市の共生~木材活用の豊かな社会(6)都市木造の街並に向けて

腰原幹雄
東京大学生産技術研究所 教授
概要・テキスト
2000年から始まった都市木造の取り組みだが、現実にはまだ一部の人にしか知られていない。木の香りと手触りを身近に取り戻せば、私たちの暮らしはどんなに変わるだろう。東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏に、都市木造を啓蒙活動の側面から語っていただく。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中第6話)
時間:08:10
収録日:2015/11/19
追加日:2016/05/12
≪全文≫

●木造の魅力を引き出す技術と「木」の外壁


 現在の都市木造技術はまだ「竪穴式住居」状態で模索中ですが、一歩先にある魅力の部分も足さなければなりません。では、どんな外観をしていたら格好がいいのだろうと考え始めると、実は少しずつですが、もう出てきています。

 都市の中で、建物自体は木造でなくても、木の外壁を使おうという動きが出始めているのです。例えば浅草の観光センターもそうですし、こちらは表参道の交差点にある商業施設です。

 建築家は、どういうわけか細い木をたくさん並べるのが好きです。いろいろな都市部で木の外壁のビルの写真を撮ると、大概似たような趣きになります。これは何かというと、町家の「千本格子」とか柱梁の線なのです。

 昔のような2階建てぐらいなら、傷んでも梯子を使えば交換できますが、ここまで高い建物になると、上の方が腐ってきたときにはどうやって交換するのかも考えなければいけない。残念ながら、今のところは、まだその技術が確立されていません。


●技術を開発するには案件が必要というジレンマ


 ここに4枚写真があります。木がたくさん見えている左側の2枚は木造ではなくて、木の見えない右側の2枚が木造の建物です。なぜこうなるのかというと、木を構造材として使った場合、外に露出すると「雨掛かり」の高いハードルがあるので、なかなか前面には出せない。でも、鉄筋コンクリート造であれば、木は交換できる前提なので、見えるようにできるということです。この辺りが技術のジレンマなのですが、将来的にはこういう建物も本当に木造で完成できるようになるかもしれません。

 今後問題になるのは、このような技術開発は案件、課題がないと全く前に進めない点です。まさに「鶏が先か、卵が先か」のようなものです。建てたいけれども「建てられる技術がないから、建てません」と言われてしまうのですが、「建てたい」と言われないと、技術もなかなか進歩しないわけです。

 日本初の本格的な木造オフィスは、誰が建ててくれることになるのでしょうか。こういう講演会などでお話しするときに私は必ず、「皆さん、ぜひ本社ビルを木造にしてください。今なら『日本初』という冠がいくらでもついてきます」と言っています。ぜひやっていただきたいと思います。


●「木の風景」を伝えるイベントは都会の中心で


 私たちの活動では、「風景...
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