「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「マルコムX」とは?…「X」に込められた意味
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(2)マルコムXと多文化主義
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
どれほど信者数が多くても、「アメリカの宗教」とみなされることのなかったイスラムだが、21世紀の多文化主義時代を迎え、その様相が変化している。今回はアメリカ人に自らのアイデンティティを問わせていった歴史の流れを、歴史学者・山内昌之氏にご紹介いただく。(全8話中第2話)
時間:11分40秒
収録日:2016年6月1日
追加日:2016年7月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●アメリカのイスラムはどのように誕生したか


 前回からイスラムとアメリカとの関係、あるいは最も知られていないアメリカの中のイスラムについて、話していきたいと考えました。今日は第2回目です。

 おそらく一般のアメリカ人には、歴史的に決定的事実というものを知らない傾向があります。もちろん普通の日本人は、アメリカの中のイスラム人がどうやって誕生したかということについて、ほとんど知らない人が多いかと思います。

 19世紀後半から20世紀初頭に、当時のオスマン帝国が支配していたアラブ地域、あるいはアナトリアという地域から、アラブ人たち、特にアラビア語を話すキリスト教徒のアラブ人と並んで、アラビア語を話すレバノンやシリアのアラブ人ムスリム、彼らが移民として北米、すなわちアメリカやカナダに流入し、そのプロセスでイスラムが北米に着実に適応しながら成長してきたという事実があります。

 つまり、イスラムは別に新しいものではなく、19世紀の移民たち、例えば『エデンの東』を書いた映画監督で知られ、また『アメリカ アメリカ』という戯曲も書いたエリア・カザンがいますが、彼の父はもともとオスマン帝国にいたギリシア系のキリスト教徒でした。こういう人が移民してきました。あるいは海運王であったオナシスは、もともとトルコに住んでいたギリシア系の住民でしたが、流入してきました。こういう移民の流れの中にアラブ人もたくさんおり、またムスリムも多くいたのです。


●マルコムXは、なぜ「X」を名乗ったのか


 中東以外のイスラム世界からも、難民や留学生、職業人がどんどん流入していますが、こうした現実は過去にもあったわけです。特にアフリカ系アメリカ人、いわゆる黒人の間には、考えられている以上にイスラム教徒が多いのです。アフリカ大陸から奴隷として連れてこられた時に、すでにイスラム教徒だった人たちが多くいます。ところが、そのかなりの部分はキリスト教に強制改宗され、自分の名前が何であるかも忘れてしまいました。現代の黒人の人々には、祖父や曽祖父たちの元々の姓も、イスラム教徒であったことも忘れ去られた世代が多いのです。

 20世紀の終わり頃、私がちょうどハーバードにいた頃につくられて話題になった作品に、スパイク・リー監督の『マルコムX』という映画がありました。これは1992年に発表された作品でしたが、ア...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
核DNAからさぐる日本のルーツ(2)原人・旧人・新人
原人・旧人・新人は長い年月をかけて分岐と混血を重ねた
斎藤成也
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫