「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マルコムXとネーション・オブ・イスラム
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(8)マルコムX暗殺
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏による「イスラムとアメリカ」を考察するシリーズ講話の最終話。今なお、アフリカ系アメリカ人にとっての屈指の英雄として語られるマルコムX。一時は「ネーション・オブ・イスラム」に傾倒したマルコムXだが、やがて彼は正当イスラムへの回帰を主張するようになる。その運命的な契機となった出来事とは何か?(全8話中最終話)
時間:6分23秒
収録日:2016年6月9日
追加日:2016年8月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●マルコムXに込められた「X」の意味


 皆さん、こんにちは。

 モハメド・アリの死について縷々述べる機会に、マルコムXという名前が出てきました。マルコムXの「X」とは、前にも少しだけ触れましたが、自分の本来の家系の名前は永久に分からない、すなわち自分の祖先のアフリカ名というのは分からないから、その分からなさを象徴するのが「X」である、という意味なのです。

 本当の名前は「Little」と言いました。これは黒人を雇用した白人のプランテーション(農園)の主人が、自分が雇う黒人奴隷たちを分かりやすく識別するために付けた差別的な名前でした。BigやLittle、あるいはUgly(醜い)やSmall、Bigなどで、こうした名前から分かるように、このLittleという名前は白人の奴隷所有者から押し付けられたものだから、自分はもはや使わない、とマルコムXは言ったのです。これはカシアス・クレイの「クレイ(Clay、粘土・土)」が、白人の奴隷所有者から付けられた名前だから自分は使いたくないと言って、モハメド・アリに改姓したようなことと同様です。


●メッカ巡礼で真のイスラムに目覚めたマルコムX


 マルコムXはイライジャ・ムハンマドの教えを熱心に伝道しましたが、それは「イスラムの民」に多数のメンバーを引き入れる原動力ともなりました。マルコムXはこのイライジャ・ムハンマドの薫陶を受けてそこに入会し、そして、さらに新しい人たちを入会させたのです。その一人が何度もお話しましたが、元世界ヘビー級ボクシングチャンピオンのカシアス・クレイことモハメド・アリでした。また、その後、“Nation of Islam”(イスラムの民)と呼ばれる現在のアメリカ最大の黒人イスラムの結社のリーダーとなるルイス・ファラカーンという人物も、モハメド・アリと同様、イライジャ・ムハンマド、そしてマルコムXに導かれてイスラム教徒になったのです。

 マルコムXはメッカに巡礼します。そして、それによって彼は、自分たちのイスラム解釈がやや特異で、イスラムはアッラーに従う普遍的な同胞性、統一性をもっていなければならない、と考えるようになります。かつて自分の師であったイライジャ・ムハンマドは皮膚の色にこだわって「黒人は白人より高貴である」と言ったり、あるいは性的関係において非常に厳格であるイスラムの教えと違って...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一