「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「マルコムX」とは?…「X」に込められた意味
第2話へ進む
WASP神話の中で忘れられてきたイスラム教徒
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(1)アメリカのイスラムとは
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
混迷を極める中東情勢に直面して、日本とアメリカの国内では一つ明らかに変化したことがある。それは「イスラムへの関心の深まり」である。中東史研究の第一人者である歴史学者・山内昌之氏は現在、旧著『イスラムとアメリカ』の改訂を進行中だ。私たちの知らない「アメリカのイスラム」の姿をご解説いただこう。(全8話中第1話)
時間:10分49秒
収録日:2016年6月1日
追加日:2016年7月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「イスラムとアメリカ」を考え始めた頃


 皆さん、こんにちは。現代世界では、アメリカとイスラム、あるいはアメリカ合衆国の市民の中に存在するイスラム教徒、こうした「イスラムとアメリカ」という組み合わせについて、なかなかこれまで知られる機会が少なかったわけです。

 私はずっと以前に「イスラムとアメリカ」という問題に関心を持ったことがありました。1992年から1年弱、ハーバード大学に研究留学で滞在した際のことです。私は、常に中東研究者あるいはイスラム学者として「イスラムとアメリカ」の関係に関心を持ち続け、さらにアメリカ国内のイスラム教徒はどうなっているのだろうかという疑問を持ったわけです。

 帰国後、私は『イスラムとアメリカ』と題する本や、「トクヴィルとイスラム」といった論文を書きました。トクヴィル、すなわちアレクシ・ド・トクヴィルは、『アメリカの民主主義』などを書いたフランスの外務大臣経験者であり、かつ19世紀フランスの自由主義思想家で知られている人物です。こういう人の目を借りてアメリカを考えようとしたり、あるいは日本人の学者として「イスラムとアメリカ」を歴史の観点から考えようとしました。


●学問対象ではないと言われた「イスラムとアメリカ」


 1992、93年当時、あるいは本の出た1995年頃、この問題について議論する人は国際的に非常に稀でした。日本でそうしたものを書いた時に、友人たちは私を混ぜっかえして、「イスラムとアメリカなんか、何も関係ないじゃないか。何でそんなイスラムとアメリカを問題にするんだ」という声を浴びせましたが、それはまだいい方でした。「何も問題のない『イスラムとアメリカ』論といった学問的に何の対象にもならないようなものに対して、山内はなぜ関心を持つのか」という、非常に冷笑的な反応もありました。

 私は、湾岸戦争というものを虚心に眺め、中東におけるアメリカのプレゼンスの大きさ、エネルギーや地域安全保障における役割を考えた際に、それを文明論的に見ていけば、「イスラムとアメリカ」という対になる関係を考察対象にするのは、社会科学者として当然念頭に浮かぶことではないかと思った次第です。

 しかし、当時の日本には、アメリカとイスラムを結び付けて考えたり、あるいはアメリカの外交政策がイスラム世界にどのように向けられるのかといった問題関心から...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(4)社会課題の解決に取り組む人財産業
メダカの学校・総合的な学習(探究)の時間・逆参勤交代
小宮山宏
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子