「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
黒人の祖先はムスリム!?知られざるアメリカ奴隷貿易の歴史
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(3)米大陸発見と奴隷貿易
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「イスラムとアメリカ」について考察を重ねてきた歴史学者・山内昌之氏による「アメリカのイスラム」に関する連続レクチャー。ムスリムたちのアメリカへの渡来の歴史をひもとくと、意外なほど古い関係線が見えてくる。アメリカにおけるイスラムの歴史を背景に、アメリカ社会のムスリムの現状にも言及する。(全8話中第3話)
時間:9分50秒
収録日:2016年6月1日
追加日:2016年7月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●コロンブス以前にイスラム教徒がアメリカに来ていた可能性がある


 今回で3回目になりますが、「アメリカのイスラム」というテーマは必ずしも特殊な問題ではないということです。それどころか、アメリカの文化と政治に対するイスラムの影響は、テロの問題と絡みながら色濃くなっています。そして、実際にはテロとまったく無関係な市民たちがイスラム教を信じている、それだけの理由で迫害されたりするという点に、アメリカの今の政治と社会の非常に複雑な様相があるわけです。

 そこで、地味な努力でありますが、私はアメリカにおけるイスラムについて少し触れてみたいと思います。一部の歴史家たちの中には、15世紀(1492年)にコロンブスがアメリカ大陸に到来し、そして西アフリカからカリブ海に奴隷が輸出される、そうした時代よりもっと以前に、実はイスラム教徒がアメリカ大陸に来ていたのではないかという説を出す人たちも出てきています。つまり、ヨーロッパから白人、キリスト教徒たちが来る前に、イスラム教徒が来ていたという可能性があるということです。


●イスラムの出自を伏せて大量に到来したモリスコたち


 確かなことはこういうことです。イベリア半島において、イスラム教徒の水夫(カコ)、水先案内人、いわゆるパイロットたちがスペインやポルトガルによる大航海時代にアメリカ大陸に来ていました。すなわち、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼランといった人々がインド、または西インド諸島、太平洋を冒険する大航海時代の中で、確実にアメリカ大陸やアメリカ近辺のカリブ海の島々に、ムスリムが来ていたということです。

 日本においても、種子島に鉄砲が伝来したり、フランシスコ・ザビエルがキリスト教を伝道するためにたどり着いた時、その船の船員や水夫の中に、明らかに東南アジアや南アジア出身のイスラム教徒がいたということは、私の見るところほぼ確実であると思います。ただ、資料の中に名前が出てこないだけです。

 イベリア半島の話にもう一度戻りますと、例えば16世紀には、数千人の単位でモリスコと呼ばれる人たちが、明らかにアメリカに来ていたはずです。モリスコというのはもともとアラビア語ですが、イスラム支配を覆してイベリア半島を統一したフェルナンドとイザベラという夫妻によってつくられたスペインのキリスト教、カトリック国家の下で迫害され、1492年以降...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新