「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イライジャ・ムハンマドに引き継がれた黒人のイスラム運動
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(7)黒人のイスラム運動
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
意外なほど古い「イスラムとアメリカ」の関係を、アフリカ系アメリカ人にとってのイスラムという観点から、歴史学者・山内昌之氏が解説する。「抑圧された人種」として、時にキリスト教への改宗を余儀なくされた黒人たちは、イライジャ・ムハンマドによって鼓舞され「本来の信仰」イスラム教に目覚めていく。(全8話中第7話)
時間:10分30秒
収録日:2016年6月9日
追加日:2016年8月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●イスラムこそがアフリカ系アメリカ人にとっての宗教


 皆さん、こんにちは。

 前回、あるいは前々回は、ボクシングヘビー級元世界チャンピオンであるモハメド・アリ(旧姓カシアス・クレイ)と、現在の大統領選挙をめぐる共和党のドナルド・トランプ候補に関わる話をしてまいりました。つまり、その背後にあるのはアフリカ系アメリカ人、ひいては彼らにとってイスラムとは何かという問題でした。

 アメリカにおける移民以外の古くからいたムスリムの大多数は、アフリカ系アメリカ人、すなわち黒人たちでした。それは現代のアメリカのムスリム全体のおよそ3分の1、あるいはもう少し上回っているかもしれませんが、それほどの数に相当します。

 アメリカ人の大多数にとってイスラムは、よそ者の宗教、他者の宗教と思われがちですが、もともとアメリカ初期の歴史や社会をつくってきたアフリカ系市民、すなわち黒人にとっては、そうではありません。黒人にとってイスラムこそ、キリスト教的欧米世界とは違う宗教文化システムとしてアフリカからそのまま持ち込まれたということ、あるいはイスラム教徒であった人間がアメリカにやってきて、そのイスラム教信仰を奪われる、もしくは改宗を余儀なくされる中で、キリスト教を強制された黒人が生まれたということが、歴史の経緯、少なくともその一部であったことは間違いないのです。

 したがって、抑圧される黒人・抑圧する白人という構図から考えれば、キリスト教は抑圧する白人、そして黒人を支配している民族や人種の宗教としてのキリスト教であり、抑圧されてきた、あるいは抑圧されている黒人にとっての宗教は、キリスト教ではなく、そうしたものとは別種のイスラムというところに求めることも、歴史的根拠とある種のよりどころとしての正統性があったと、言えるのかもしれません。

 つまり、アメリカ人のアイデンティティとは何かといった場合に、必ずしもWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)で語ることはもはやできない時代です。そういう中においてイスラム的要素が、例えば音楽のラップミュージックなどの場合においても、そこにイスラム的言い回しや要素が入っていることがあるわけです。


●組織的な「黒人のイスラム」の出発点―ティモシー・ドリュー


 モハメド・アリことカシアス・クレイもまたその一人ですが、そこから引き継い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹