「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒
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「トランピズム」歴史的に前例のない事象が全米を覆う!
「イスラムとアメリカ」再考~米国内のイスラム教徒(6)トランピズムの衝撃
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
アメリカでは、モハメド・アリの死が悼まれているそのとき、同時に大統領選挙が進行している。その焦点が、共和党トランプ氏の台頭にあることは言うまでもない。その彼こそは、モハメド・アリが生涯戦い抜いた人種主義と差別の象徴である。今回は、歴史学者・山内昌之氏に、“トランピズム”をめぐる「イスラムとアメリカ」を解説していただく。(全8話中第6話)
時間:11分47秒
収録日:2016年6月9日
追加日:2016年7月28日
カテゴリー:
≪全文≫

●現代アメリカの問題を象徴するトランプ氏の台頭


 皆さん、こんにちは。前回は元世界ヘビー級チャンピオンボクサーであったモハメド・アリ(旧名カシアス・クレイ)の死について、アメリカとイスラムの文脈の中でお話ししました。

 アメリカでは現在、モハメド・アリが黒人やムスリムを代表する人物としてその死が悼まれていると同時に、大統領選挙が進行中です。その共和党候補者としてドナルド・トランプ氏が登場してきたことは、日本においてもすでに話題になっています。このモハメド・アリとトランプ候補の組み合わせほど、現在のアメリカ社会の抱える問題点を象徴するものもないと思われます。

 もともとトランプ氏は、共和党の必ずしも主流とはいえない中から台頭し、その人種主義的な発言と差別主義的な言動によって、アメリカ社会のとりわけ極右的な保守層の心をつかみ、かつ中間・中流層以下の白人たち全体の支持を受けるに至っています。

 彼は、アメリカに移住してくる中南米系の「ラティーノ」と総称される人々や移民全体、ひいてはイスラム教徒(ムスリム)もしくはイスラムの教義に対して、すこぶる差別的な言動を公然と行い、隠していません。すなわちトランプ氏こそは、前回お話ししたモハメド・アリことカシアス・クレイが、ブラックムスリムとしての生涯をかけて戦った相手と言えるでしょう。つまり、彼は白人による黒人差別、イスラムに対する偏見そのものを体現した人物といってもいいかと思います。


●歴史にも前例のない「トランピズム」


 またトランプ氏は、イスラエルに対する絶対的な支援と支持を表明しています。裏を返せば、パレスチナ人はもとよりアラブ人ひいては中東のイスラム教徒に対して積極的批判の立場を隠さず、イスラエル断固支持の点においても知られています。

 バラク・オバマ現大統領は、もしトランプ氏が合衆国大統領に選ばれるならば、アメリカは危機になると断じたことがあります。このトランプ氏によるアメリカのムスリム市民に対する敵意は人種主義そのものであり、まったく歴史に前例のないものだといっていいかと思います。

 トランプ候補は、ムスリム(イスラム教徒)を「アメリカには入国させない」あるいは「該当者を全てアメリカから追放する」といった極端な言辞を弄するだけではなく、「あらゆるムスリムを監視対象に置く」ということも公然と言...

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