東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題
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日本以上に「西洋化」した中国で、儒教復興の兆しあり?
東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題(3)伝統的「王道」論の再浮上
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
東京大学東洋文化研究所副所長・教授の中島隆博氏によれば、「中国発の普遍」をめぐる動きの中で、かつて中国思想の中心だった儒教が復興しようとしている。ただしそれはシニカルな復活だ。役に立つのは、伝統的な儒教そのものではない。儒教の見直しを通じて、西欧的な言説の脱中心化を図ること、これが近年の儒教復興の強調点だという。(2016年4月21日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「東洋の普遍、西洋の普遍 科学、民主主義、資本主義」より、全7話中第3話)
時間:5分11秒
収録日:2016年4月21日
追加日:2016年8月12日
≪全文≫

●現代中国で儒教を復興させる


 もう一つの「王道」という概念も、再び浮上してきています。20世紀前半の日本も「王道」ということを口にしました。ただ日本の場合は、「王道」ではなくて「王道」の上をいく「皇道」と言いました。「皇道」によって、より高次の普遍を示そうとしたのです。(「皇道」に比べたら)中国的な「王道」は非常に限定である。日本は、こういった議論をしていました。

 現在、「王道」という概念を再び問題にしているのは、例えばこの干春松(カン・シュンソン)という人です。彼は非常にシニカルな見方をします。彼は、前近代的な「王道」などをそのまま主張してもしょうがないと言っています。

 そこで彼はどう言うかというと、「私たちは儒家や儒教的なものを普遍価値とみなす勇気を失ってきた」と言います。これは近代中国を考えれば妥当ですね。儒教などは封建制の象徴、後進性の象徴だといって、徹底的に捨て去られていきました。

 しかしここで考えている問題は、いかなる普遍性も単一的なものではなく多様に構成されるものだ、ということではないか。もしそうだとすれば、前近代の儒家や儒教をそのまま復活させる必要はないにしても、その遺産から何かを汲み取り、ある種の多様性を構成するものとして使うことはできないか。


●あえて儒教を論じて、多様性を取り戻す


 ただ他方で、彼の見方はシニカルでもあります。こう申し上げましたのは、次のような理由です。儒家の経典を読めば、現実の問題全てに対応するものを探し出すことができると言われてきた。しかしそう考えるのは、幻想である。彼は、そんなものはないと言っています。

 (「王道」と言っても)古代の朝貢制度やその他の皇帝権体制に決して肩入れしているわけではない。(彼に言わせれば)そんなことは不可能です。むしろそうではない(古いものの単なる復活ではない)仕方で、伝統的な思想資源をもう一度使い直すことができないのか。

 彼は、現在問われているのは、ディスコース(言説)の権利だと言います。ディスコースとは、われわれが語ることそのもの、すなわち言葉です。この言葉というものが、いったい今どうなっているのか。世界的に見ると、ほとんどの概念は西洋(の言説)に牛耳られている。日本もそうですね。例えば政治に関する概念でも、日本で使われるもののほとんどは、西洋発の概念です...

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