東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本以上に「西洋化」した中国で、儒教復興の兆しあり?
東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題(3)伝統的「王道」論の再浮上
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
東京大学東洋文化研究所副所長・教授の中島隆博氏によれば、「中国発の普遍」をめぐる動きの中で、かつて中国思想の中心だった儒教が復興しようとしている。ただしそれはシニカルな復活だ。役に立つのは、伝統的な儒教そのものではない。儒教の見直しを通じて、西欧的な言説の脱中心化を図ること、これが近年の儒教復興の強調点だという。(2016年4月21日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「東洋の普遍、西洋の普遍 科学、民主主義、資本主義」より、全7話中第3話)
時間:5分11秒
収録日:2016年4月21日
追加日:2016年8月12日
≪全文≫

●現代中国で儒教を復興させる


 もう一つの「王道」という概念も、再び浮上してきています。20世紀前半の日本も「王道」ということを口にしました。ただ日本の場合は、「王道」ではなくて「王道」の上をいく「皇道」と言いました。「皇道」によって、より高次の普遍を示そうとしたのです。(「皇道」に比べたら)中国的な「王道」は非常に限定である。日本は、こういった議論をしていました。

 現在、「王道」という概念を再び問題にしているのは、例えばこの干春松(カン・シュンソン)という人です。彼は非常にシニカルな見方をします。彼は、前近代的な「王道」などをそのまま主張してもしょうがないと言っています。

 そこで彼はどう言うかというと、「私たちは儒家や儒教的なものを普遍価値とみなす勇気を失ってきた」と言います。これは近代中国を考えれば妥当ですね。儒教などは封建制の象徴、後進性の象徴だといって、徹底的に捨て去られていきました。

 しかしここで考えている問題は、いかなる普遍性も単一的なものではなく多様に構成されるものだ、ということではないか。もしそうだとすれば、前近代の儒家や儒教をそのまま復活させる必要はないにしても、その遺産から何かを汲み取り、ある種の多様性を構成するものとして使うことはできないか。


●あえて儒教を論じて、多様性を取り戻す


 ただ他方で、彼の見方はシニカルでもあります。こう申し上げましたのは、次のような理由です。儒家の経典を読めば、現実の問題全てに対応するものを探し出すことができると言われてきた。しかしそう考えるのは、幻想である。彼は、そんなものはないと言っています。

 (「王道」と言っても)古代の朝貢制度やその他の皇帝権体制に決して肩入れしているわけではない。(彼に言わせれば)そんなことは不可能です。むしろそうではない(古いものの単なる復活ではない)仕方で、伝統的な思想資源をもう一度使い直すことができないのか。

 彼は、現在問われているのは、ディスコース(言説)の権利だと言います。ディスコースとは、われわれが語ることそのもの、すなわち言葉です。この言葉というものが、いったい今どうなっているのか。世界的に見ると、ほとんどの概念は西洋(の言説)に牛耳られている。日本もそうですね。例えば政治に関する概念でも、日本で使われるもののほとんどは、西洋発の概念です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新