東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題
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現代中国思想が元ネタにした竹内好『方法としてのアジア』
東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題(2)中国発「普遍主義」の問題
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
中国現政権に大きな思想的影響力を持つ趙汀陽氏は、中国発の普遍を「方法としての中国」と論じた。普遍を、その中身でなく主体の形成プロセスとして考えるこの思想には、中国内外からさまざまな批判が寄せられている。東京大学東洋文化研究所副所長・教授の中島隆博氏が、現政権の中心思想とそれに対する批判を解説する。(2016年4月21日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「東洋の普遍、西洋の普遍 科学、民主主義、資本主義」より、全7話中第2話)
時間:14分51秒
収録日:2016年4月21日
追加日:2016年8月10日
≪全文≫

●重要なのは「方法としての中国」


 最近になって、趙汀陽さんは「中国の夢」について、このように言っています。これは非常に重要なので、よくお読みいただきたいと思います。中国の本質とは何か。それに対する答えとして「本質はない」と言ったのです。

 確かにそれはその通りです。先ほど、文化などと下手に言っては駄目だと言いましたね。そんな言い方は軽佻浮薄である。では中国とは何か。彼は、それは「方法としての中国」、もしくは「方法論的な中国」であると言います。

 難しい言い方です。「方法」としての中国であって、「実体」や「本質」としての中国がそこにあるわけではない。そんなものはどこにもない。中国というのは一つの「方法」なのだ。「方法」だということは、その方法を適用することで、何かが動き出したり何かが始まったりする。そういうことですね。

 では、その「方法」としての中国とは何か。それは、この「普遍」に貢献する中国という夢であり、(「方法」は)その鍵を握っているものです。それはスライドの右の方に書いてあるように、「(水のように)きわめて柔軟な仕方で選択を行うこと、これが「方法としての中国」である。いかなる主義・イデオロギーにも拘泥しない。そういう柔軟性こそが「方法としての中国」である。方法論的中国は、いかなる信念であれ、基礎付け主義を放棄する。あるいは、原理主義を放棄する」(基礎付け主義というのは、何か基礎がきちんとあり、その上に全てを組み立てていけば、確固としたものができるだろうという考え方です)。こういう言い方をしているわけです。


●元ネタはあの日本の思想家


 しかしこれは、趙汀陽という、現在の中国の思想家が初めて言い出したことではありません。ここには、ある種のエコーがあります。どのエコーか。日本のエコーです。「方法」のことを最初に論じたのは、日本の思想家です。これはもう完全に分かっています、竹内好です。

 彼自身は、「方法としてのアジア」と言いました。中国やアジアを、「実体」あるいは「本質」として前提にすることはやめよう。そんなものはどこにもない。同時に日本もそうです。そのような日本(の「本質」や「実体」)があるわけではない。大事なことは、西欧的な普遍に対して、アジアや中国あるいは日本というものを「方法」として置くことにより、それを乗り越えることだ。そう...

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