東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人権はなぜ普遍化したかーフランソワ・ジュリアンの視点
東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題(6)普遍化とはトランスの経験だ
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
東京大学東洋文化研究所の中島隆博教授は、現在「普遍」を問うとは「普遍化」への努力を意味すると言う。かつての「人権」がそうだったように、最初から普遍的だった価値などない。「中国発の普遍」が問われる中、日本はこの「普遍化」の努力に、中国や他のアジア諸国とどう関われるか。真に問われているのは、この問題である。(2016年4月21日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「東洋の普遍、西洋の普遍 科学、民主主義、資本主義」より、全7話中第6話)
時間:11分19秒
収録日:2016年4月21日
追加日:2016年8月24日
≪全文≫

●ロバート・ベラーの「倫理的近代」


 この問題は、副題の3番目に挙げた、資本主義の問題とも深く関わってきます。私は、晩年のロバート・ベラーという人とお付き合いをしました。現在、アメリカの大統領選挙の真っ最中ですが、ベラーさんは多分、バーニー・サンダースさんなどと非常に近い考えをお持ちだったと思います。同時に彼は、非常に敬虔なクリスチャンでもありました。世俗化の時代、すなわち宗教と政治が切り離された時代の後に、宗教とは何なのかをもう一度問い直した人です。

 ここに「倫理的近代」と書きましたが、彼自身は近代には光と影があると言いました。20世紀を考えると戦争の世紀ですから、近代がもたらした影の部分は非常に濃かったと言えます。では近代を捨て去ったらそれでいいのか。そんなことはない。近代には、光の部分もやはりあったのではないか。近代には、ある種の解放の思想があった。それを彼は、「倫理的近代」と呼んでみるのです。

 ここでいう倫理とは、それほど強い倫理ではありません。どちらかと言えば非常に弱い倫理です。ここに書いておいたように、近代の倫理性を担保しているものは三つあります。一つは経済、これは面白い見方です。経済が独立をしたことが、人間にとっては非常に意味がある、という見方です。もう一つは公共圏です。これは、市民が自由に意見を交換する領域です。近代になってこれが成立した、ということです。そして、最後は主権が人民に移ったことです。この三つが、倫理的な近代を支えている三本柱ではないか。ベラーはこう考えます。


●近代資本主義と倫理を接続せよ


 その経済についていえば、ベラーが注目するのはアダム・スミスです。スミスは、先ほど申し上げたデイヴィッド・ヒュームとともに、スコットランド啓蒙を体現している人です。スミスは何を考えたか。「スミスは、自立的な経済が作動するのは、非経済的な動機の周りに組織された、倫理的で政治的な枠組みにおいてのみだと考えていた。スミスは経済的なリベラルであったが、ネオ・リベラルではなかった」。ベラーはこういうことを言っています。

 確かにスミスは、『国富論』の著者でもあると同時に『道徳感情論』の著者でもあります。つまり、近代の弱い道徳的規範を、人間の身体や感情に基づかせました。これはヒュームと同じ見方です。ここに可能性を見出していくのです。そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
北欧神話の基本を知る(1)世界でもっとも悲観的な神話
世界滅亡を予言!?人類史上もっとも悲観的な北欧神話とは
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓