東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題
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この世界を安定させる弱い理由があるのでは―ヒューム問題
東洋の普遍、西洋の普遍~中国の思想的課題(5)科学の普遍性は「弱い」
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
東京大学東洋文化研究所の中島隆博教授によると、近代科学によって世界が偶然的なものであることが示されたという。科学は、本来人間などいなくとも世界は持続し続けるという「悪夢」を明るみに出したのだ。ではそのような世界で、人間はいかなる倫理や道徳を構築することができるのか。スコットランド啓蒙の代表的存在であるヒュームを参照しつつ、この大きな問いに踏み込む。(2016年4月21日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「東洋の普遍、西洋の普遍 科学、民主主義、資本主義」より、全7話中第5話)
時間:9分29秒
収録日:2016年4月21日
追加日:2016年8月19日
≪全文≫

●メイヤスーの近代科学批判


 もう一つの重要問題である科学について、少しお話をしたいと思います。われわれが科学と聞くと、非常に客観的で、まさに普遍的なものだと考えますが、本当にそうなのかということです。

 私が、たまたま今月(4月)書評をした本があるので、それをご紹介しておきたいと思います。カンタン・メイヤスーというフランスの哲学者が書いた本です。

 最初の問いが面白いのです。例えば、「天体物理学者や地質学者、古生物学者が、宇宙の年代や地球の年代、人類以前の生物種の出現年代、あるいは人類そのものの出現年代について論じるとき、その学者たちはいったい何について語っているのだろうかという問いです。人間の生まれる前の宇宙について考えるとは、いったい何をしていることになるのか、ということです。

 科学者はそんなことを平気でやります。あるいは、少し議論を変えて、人間が滅びた後の宇宙を考えることも当然できます。しかしそれは、いったい何をしていることになるのか。当然そこに人間がいないわけですから、人間と全く無関係の世界について考えるということを科学者たちは行っています。人間なしでこの世界が存在したとしても、別に構わないわけです。

 しかし、科学者たちが本当は何をしてきたかと言えば、科学という営みを人間につなごう、つなごうとしてきていたのです。これを「相関主義」といいます。科学を人間と相関させる。例えば「観測」です。人間は観測をします。観測するのは人間だけです。人間以前の宇宙を観測するのも人間です。そうすると、その観測には人間の影が必ずあるのではないか。メイヤスーはこういう言い方をします。


●科学は「人間なしの世界」という悪夢を切り開いた


 このメイヤスーが言いたいのは、科学は相関主義などではないのではないか、ということです。本当の科学の衝撃とは、相関主義が一切ないような絶対主義ではないか。絶対的な普遍を考える。科学は、そんな恐ろしいことを私たちに投げかけてしまったのではないか。現代科学ですら、まだある種の相関主義を引きずっているわけですが、科学はもっと空恐ろしいものではないのか。こういう言い方をしています。

 それがここです。近代科学がやったこととは何か。それは、ガリレイ=コペルニクス的転回がやったことで、「人間から分離可能な世界」があることを示したことで...

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