原因と結果の迷宮~因果関係と哲学
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
不作為を原因にすれば誰もが責任者であり得る
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(7)野放図に拡がる因果関係の世界
一ノ瀬正樹(東京大学名誉教授/武蔵野大学ウェルビーイング学部教授)
東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が指摘する「野放図因果」の射程は広い。育児放棄によって害された子どもの責任はどこにあるのか。私たちは普通「親にある」と考える。しかし、野放図因果の枠組みで考えれば、「何もしなかった」のは親だけではない。不作為を原因に考えれば、なんと、あらゆる人にその責任は帰属するのだ。(全8話中第7話)
時間:7分33秒
収録日:2016年12月15日
追加日:2017年3月25日
≪全文≫

●「やらなかった」責任は、どこまでも拡がり続ける


 野放図因果の問題はもっと普遍的で、いろいろな因果関係に全て当てはまってしまうのです。特にこういう不作為、「何々しない」ということに関しては、もうほとんど当てはまってしまいます。

 例えば、飛行機の整備士の不注意で事故が起こってしまった場合、通常は「飛行機の整備士がきちんとチェックしていれば、事故は起こらなかっただろう」となって、飛行機整備士の不注意が原因とされます。しかし実は、その整備は、件の整備士ではなく、同僚の別の整備士がやれば良かったのではないかともいえます。あるいはその他の会社のもっと偉い人、かつて技術畑にいた偉い上司が見てあげれば良かったのではないかなど、いろいろいえてしまいます。あるいは、その特定の飛行機整備士以外の有能な整備士に「点検しろ」と命じることは、社長だってできたということがあります。

 また、育児放棄によって子どもが害されたり、場合によっては子どもが死亡してしまうということがあります。これも育児放棄をせず、親がきちんとケアをして食事を与えて衛生的なことも保ってあげていれば、子どもは害されることはなかったでしょう。でも別に親だけが責められなくてはいけないわけではありません。親以外の他の人、例えばおじさんやおばさん、あるいはいとこがやっても良かったわけです。

 「子どもが害された原因は育児放棄だ」というとき、私たちはある種の飛躍をしています。「親が育児放棄をし、子どもに何もケアをしなかった。だから親の責任だ」、ということです。でも別に、親ではない人がケアしても良かったわけです。この「何々しなかった」というのは、親に限らず、他の人もしなかったということでは同じでしょう。ここでの問題は正確には、「他の人もしなかった」のではなく、「なぜ親のしなかったことが(子どもが害されたことの)特定の原因、あるいは最も有力な原因としてピックアップされるのか」ということです。これが別の議論によって補われないと、原因指定にならないのです。

 放射線教育の欠如によって、恐怖による害が生まれてしまうこともあります。これは原発事故など、さまざまな放射線に関わることです。「ベクレル」や「シーベルト」がどういうものであるか。あるいは放射線は、自然現象としてどういうものが現に存在しているか。こういうことについて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
一ノ瀬正樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
世界の語り方、日本の語り方(1)なぜ「語り方」なのか
今後身に付けるべき知性として「新しい語り方」を考える
中島隆博
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(7)ポグロムとホロコースト
歴史の中のユダヤ人大量虐殺…ポグロムとホロコーストの違い
鶴見太郎
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(4)ビットコインは通貨たりうるか
ビットコインは通貨たりうるか…法定通貨との併存も困難?
養田功一郎
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
編集部ラジオ2026(11)日本史から読むメンタルヘルス
【10min解説】與那覇潤先生《日本人とメンタルヘルス》
テンミニッツ・アカデミー編集部
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(3)稲作社会と頑張る日本人
ダメなのは「頑張りが足らない」から…うつを招く稲作的発想
與那覇潤
これから必要な人材と人材教育とは?(2)AI時代に必要とされる能力
AI時代に必要なのは「問いを立てる能力」…いかに育成するか
柳川範之
高市政権の進むべき道…可能性と課題(4)外交力と防衛力の強化へ
求められる「能動的サイバー防御」、問われる本物の外交力
島田晴雄
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(5)海外協力隊と国際交流
永遠の課題は透明性…国際NGOに求められるガバナンス意識
小原雅博