原因と結果の迷宮~因果関係と哲学
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
因果関係は不確実で、不可思議で、不可欠なもの
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(8)不確実で不可思議で、不可欠なもの
哲学と生き方
一ノ瀬正樹(東京大学名誉教授/武蔵野大学人間科学部人間科学科教授)
人間にとって、不確実で不可思議で、不可欠なもの。東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏は、因果関係のあり方をこう表現する。一見自明にも見える因果関係には、実にさまざまな謎と迷宮が潜んでいる。「当たり前」だと思っていることを、通常とは違う角度から捉え直すのが、一之瀬氏のような哲学者たちの営みである。(全8話中第8話)
時間:7分01秒
収録日:2016年12月15日
追加日:2017年4月1日
≪全文≫

●断定を避けるのが、哲学的な態度である


 哲学とは、普段当たり前だと思っていることに少し深い問いを立てることで、当たり前だと思っていることが実は必ずしも当たり前ではないことを理解する、それを大きな眼目の一つとしている学問なのです。「原因と結果」を今シリーズでは主題として挙げましたが、これらは実はそれほど自明なことではないということです。

 万人が哲学者になってしまうと、社会の物事が全く進まないので、それはあまり好ましいことではないでしょう。でも時々は、物事を冷静に見てみることです。哲学的である態度とはちょうど正反対の態度は、断定してしまうこと、そう思い込んでしまうことです。それは哲学とは反対の態度です。「これはこうである」と断定し、それ以外は受け付けないという態度は、非哲学的な態度なのです。

 どんな考え方であっても、必ず哲学的に考えると「そうではないのではないか」という疑問が成り立ちますし、その疑問を浮かび上がらせる議論は十分に可能です。「絶対に正しい」とか「確実にこうである」と思い込んでしまう態度は、非常に非哲学的な態度です。


●「ないこと」は社会に大きな影響を与える


 一方で、確固たる信念を持って物事を進める人物、リーダーシップを持って進めていく人物は、社会には絶対に必要だと私も思います。そうでなければ、社会は進まないからです。ですがその中でも、ごく少数の、マイナーな人々がいることも大切です。「ほぼ全員がそう思っているけれど、みんなが賛同してそちらに国家や社会が向かっているけれど、でも実はそうでない見方もあるのではないか」ということを密かに思い、チャンスがあればその思いを伝え、発信する。そうした作業をする人が、たとえわずかなパーセンテージであれ、いることが健全であり、社会の安全を考えると良いことではないかと私は思います。

 とりわけ政治的なことに関わったりすると、熱狂やポピュリズムという現象があれば、そちらの方へバーッと進んでしまいやすい。それも人間の本性の一つなのですが、その中にわずかでも哲学的な考え方をする人がいても良いのではないかと思います。

 そうしたことが顕在化する例として、「ないこと」、すなわち不作為が重要な事例になるということを話しました。実際に「ないこと」は、時として重大な影響、重大な変化をもたらします。例えば、アメリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
鎌田東二
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規