ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ
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スッラとディオクレティアヌス―二人の独裁者の共通点とは
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(4)救国の英雄・スッラ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏が、カルタゴに敗走し、危機に陥ったローマを救った英雄・スキピオと並んで英雄と評価するのが、スッラだ。彼は敵と味方を峻別し、過酷さと温情さを兼ね備えた人物であり、後にローマ帝国の安定化に努めたディオクレティアヌスとの共通点も見出せる。(2016年9月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「歴史に学ぶ戦略思考 ローマ人を中心として」より、全8話中第4話)
時間:9分45秒
収録日:2016年9月30日
追加日:2017年6月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローマを救った英雄・スキピオ


 カンナエの戦いから十数年たち、コルネリウス・スキピオという青年がローマ軍を指揮します。今度はこのザマという場所で、202年にカルタゴを打ち負かしました。今の地域で言えばここはチュニジアですから、ローマ軍からすればアウェーの戦いになります。それにもかかわらずスキピオは勝利を収め、やがてカルタゴ軍は、ここで大きな敗北を喫することになります。

 このスキピオは、非常に精悍(せいかん)な顔をしていた人物です。ある意味ではハンニバルに脅かされていたローマ軍を救った、救国の英雄と言っていい人物です。その彼が征服をしていく過程で、ちょっとしたエピソードが残っています。

 カルタゴはイベリア半島に勢力を張っていましたから、そのイベリア半島の戦いで、スキピオは首尾よくその連中を打倒しました。そして、カルタゴを支援していた部族たちを征服した時に、その部族の娘で、目を見張るほどの美貌の女性がいました。古代の戦争などというのは、意中の女性がいれば、戦争に勝った方の武将が自分のところに引き連れてきても何ら非難されることはなく、それが当たり前のように考えられていました。しかしスキピオは、そんなことはしなかった。婚約者がいたこの娘をその婚約者の元に返してやり、さらに両親から身代金として提供されたお金を、結婚の祝儀として返してあげるという、非常なる温情を示します。(スキピオの自制)

 スキピオには、もちろん計算があります。こうした経緯を見て、かつてカルタゴに味方していた部族たちは、スキピオの魅力に惹かれてローマ軍を支援するようになっていくだろうという計算があったのでしょう。そういう人物として、救国の英雄の一人でいるわけです。


●スキピオを引きずり降ろした嫉妬深きカトー


 しかし、一方で大カトーという人がいます。この人は非常に国粋主義者の人物で、スキピオがもともと好きではありませんでした。大きな対立点として、新しい文化への対応があります。新しい文化が入ってくる場合、ローマにとっての新しい文化、先進文化とはギリシャです。ギリシャの文化に対して、それを積極的に取り入れようとしたのがスキピオ系であり、この大スキピオもそうでした。だから、カトーという人物からすれば、スキピオなどは「ギリシャかぶれ」だと言えます。日本でなぞらえれば、明治の頃にヨーロッパやア...

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