ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ
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ディオクレティアヌスはローマの「3世紀の危機」を救った
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(6)ディオクレティアヌスの潔さ
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
ローマは、暴君や軍人皇帝の出現で度々混乱に見舞われたが、そのたびに復活してきた。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏は、そのような英雄としてウェウパシアヌスやディオクレティアヌスを挙げる。特にディオクレティアヌスには、自ら政界を引退した後、たとえ請われても政界復帰などしなかった潔さがあった。(2016年9月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「歴史に学ぶ戦略思考 ローマ人を中心として」より、全8話中第6話)
時間:10分18秒
収録日:2016年9月30日
追加日:2017年6月10日
カテゴリー:
≪全文≫

●クレオパトラと結ばれた、2人のローマ人


 カエサルは、貴族派を打ち破って自分の独裁権力をつくり、大きな共和政をつくりますが、その後ローマはオクタヴィアヌスの時代になります。その後に書いてあるのは、マルクス・アントニウスです。『アントニーとクレオパトラ』で有名なマルクス・アントニウスです。最近、関係する本が翻訳され、私も毎日新聞に書評を書きました。研究者がきちんと書いているのですが、面白いことに「クレオパトラはカエサルと交わるまで処女だった」と、学問的にしっかり言っています。その後、今度はアントニウスと結ばれる。カエサルが亡くなった後、今度はアントニウスがエジプトに行って、アントニウスと結ばれます。そうしてアントニウスの愛人のようになっていきました。

 その研究者が「クレオパトラは、たぶん、男は2人しか知らなかった」と言っています。証拠としてそういうものは何も残っていませんが、そう言える。というのは、当時行われていたのが兄弟婚だったからです。クレオパトラは、もう22、23歳の時に、自分の13歳の弟と結婚します。もちろん、弟など全然目にしていません。むしろ対立しています。両方の勢力が、どちらかに絞ろうというためにやっているわけです。そういうことがあって、少なくともクレオパトラは、カエサルと付き合うまでは処女だったということが言われています。

 カエサルが暗殺された後で出てきたアントニウスがいて、そしてカエサルの後継者に指名されていたのが、アウグストゥスです。元はオクタヴィアヌスという名前で、皇帝になってからアウグストゥスと呼ばれます。この人が、皇帝という意味では初代の皇帝です。古代では彫像に色が付いていて、われわれの感覚で見れば、非常にけばけばしいものでした。


●醜男を自称した皇帝ウェスパシアヌス


 それから今度はネロという人が出てきて、国内がまた混乱し、内乱が起こります。その内乱を収拾したのが、ウェスパシアヌスという皇帝です。この人は、それまでのカエサルなどとは全く異なる血筋の人です。彼は、それまでのネロなどによって非常に乱れた風紀をやめ、とても厳格で比較的新しい風紀をつくり上げます。本人が、生活態度や服装の面で古風であり、民衆もそれに恭順の意を示したのです。

 ただこのウェスパシアヌスの唯一の欠点として、非常に金銭に執着した、すなわちケチだったこと...

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