ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ日本人は信仰心が薄いのにモラルが高いのか
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(8)質疑応答
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
欧米人からすると意外なのは、日本人のモラルの高さだ。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏によれば、その一つの解答が、新渡戸稲造の『武士道』である。誠実で実直な日本人は、陰謀や罠よりも正攻法で闘うことを選んだローマ人たちによく似ている。日本人もローマ人も、何かを生みだすより洗練させる技術に長けていた。(2016年9月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「歴史に学ぶ戦略思考 ローマ人を中心として」より、全8話中第8話)
時間:11分25秒
収録日:2016年9月30日
追加日:2017年6月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●衰退期のローマと比較すると、今のアメリカはどのように映るか


本村 研究者の方によれば、「大体、30年に1遍くらいの頻度で、アメリカ衰退論が出てくる」ということです。最初のものは20世紀になってからで、フランスの首相だったクレマンソーという人が、「アメリカは歴史の中では非常に特異な存在だ」と言いました。「全くの野蛮から、いきなり衰退、堕落に向かっている。普通は真ん中に文明があるはずだが」と言ったのです。要するに、野蛮から滅亡になるようなこともあるということです。

 クレマンソーは1910~20年代の人です。彼は、大変な軍人であると同時に政治家でもありました。また他面では、ジャーナリストです。ジャーナリストであると同時に軍人だったので、いろいろ面白いことを言っています。例えば「18歳でマルキストにならないやつは、もう勉強不足だ」とか「頭は悪い」、「だけど、40歳までマルキストでいるやつは、もっと悪い」など、そういうせりふを言って、警句を発していた人です。その人が、アメリカ衰退論を最初に言いました。

 その後は日本でも出てきます。最近でも、やはりローマ帝国とよく比較されます。ただ私は、アメリカの衰退という場合、例えば軍事力や経済力といった目に見えるような形で見れば、確かにある程度は縮小あるいは衰退しているように見えますが、やはり今の時代、ハードパワーだけではないと考えます。ハードパワーだけではなく、ソフトパワーのようなものが大切です。アメリカは、それがいろいろな形で影響を与えています。例えば映画の影響は圧倒的です。日本のことなど世界に知られていないのに、アメリカのことは映画を通じて何でも知ることができる。そういうソフトパワーの力で、アメリカには吸引力があります。

 おそらくそれは、ローマにはなかなかできなかったことです。これはやはり20世紀的な新しい現象です。「ローマには何でも詰まっている」と言いますが、いま述べたようなソフトパワーをこれからどうやって使っていくかが、大きなポイントになるのではないかと思います。逆に言えば中国などは、それがほとんどできない状態にいるということになるのではないでしょうか。


●なぜ信仰心が篤いとは言えない日本人のモラルは高いのか


本村 キリスト教は、日本では江戸時代の初期に公認されていましたが、その後結局、キリシタン弾圧になり、維新後に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一