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サビニ人略奪に見られる初期ローマの「ならず者」的性格

ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(2)ならず者国家・ローマ

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
『サビニの女たち』
丸山眞男や塩野七生が言ったように、約1,200年続いたローマ史には、魅力ある人物や出来事が詰まっている。早稲田大学国際教養学部特任教授・本村凌二氏によれば、建国時のローマは、現在のISのような、いわば「ならず者国家」だった。「サビニ人の略奪」事件はその象徴だ。(2016年9月30日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「歴史に学ぶ戦略思考 ローマ人を中心として」より、全8話中第2話)
時間:09:39
収録日:2016/09/30
追加日:2017/05/31
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≪全文≫

●ローマは世界史のブランド品だ


 今日のテーマは、レジュメにありますように、ローマ史の活用法です。私は昭和22年の生まれで、団塊世代のトップバッターのようなところにいますが、その世代が学生だった頃に大先生とされていた丸山眞男という東大の政治思想史の先生がいます。年配の方はご存知かと思いますが、若い人はもしかしたら初耳かもしれません。彼がある対談の中で、こういうことを言っています。

 「ローマ史というのは、社会科学の実験室であり、人類の経験の全てがあの1,200年ぐらいの間に詰まっている。人類が経験することは、ほとんど、あそこで1回はやっている」。こういったことを丸山さんは言っています。

 私がこれを最初に読んだ時、大学院生としてちょうどローマ史を始めたばかりの頃だったので、一つの心強い言葉として聞いていました。また最近では、塩野七生さんが1990年代から2005年ぐらいまででしょうか、『ローマ人の物語』(新潮社)全15巻をお書きになっています。これに非常に啓発された方も多いのではないかと思います。

 ここ10年ぐらい、私はローマに行くと塩野さんのお宅に連絡して、どこかで食事をします。塩野さんは、たぶん日本に来たら、いろいろな政治家や実業家の方とお会いになって、ごちそうされるのだと思いますが、私はローマで塩野さんにおごってもらっている数少ない人間の1人ではないかと思います。「ローマに来てくれたぐらいでいいわよ」と言って、毎回おごってもらっています。

 彼女が、話の中で言っていました。最初の頃、塩野さんはイタリア・ルネサンスなどの時代のことをたくさん書いていました。『海の都の物語』や『ヴェネツィア物語』といった作品を書いていたのですが、そこから急に1,500年ぐらいさかのぼって、ローマのことを執筆された。その時に、周囲から相当、質問をされたそうです。「なぜローマなの?」と。そうしたら、彼女が一言、「何言ってんのよ。ローマ史は、もう世界史のブランド品なんだよ」と答えたそうです。やはり直感的には、丸山先生が感じておられたようなことを塩野さんも感じていた。おそらく彼女は、実際にはもっと以前から自分のライフワークとしてローマに取り組むことを考えていたのでしょう。


●独裁者を嫌うローマは、共和政を選んだ


 紀元前753年、七五三ですから覚えやすいと思いますが、この年にローマが建国され...
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