●三頭政治におけるカエサルの位置
スッラの後には、有名なクラッスス、ポンペイウス、カエサルという一連の支配者が出ます。画面で示したのはポンペイウスです。これは結構な高齢、50代になってからの彫像ですから、何となく気の抜けたおじさんみたいな顔をしていますが、若い時はかなりハンサムだったと言われています。そして弁論家のキケロ、それからカエサルです。
スッラは非常に冷徹なところもありますが、そうでない一面もありました。彼は若い時、政権を取ってからもそうでしたが、暇な時間になると、日本風に言えば芸者を上げて遊ぶといったことが大好きだったらしいのです。芸人との付き合いも非常に盛んだった、と言われているぐらいの人物です。しかしいったん仕事になると、味方にはもう徹底的に温情を示し、敵は徹底的にやっつけるというところがあった。
カエサルは、それとは少し違う形でいきます。このクラッスス、ポンペイウス、カエサルらは、第1回三頭政治と言われています。紀元前の1世紀後半の最初の方、50年から53年ぐらいまでの間に、この3人が、いわば結託してローマの実権を握ります。当時は元老院が、もう大きな権力を持っていました。この時のローマは帝国ではありませんのでまだ皇帝はいませんが、実質的にはエンパイアと言っていいぐらいの規模になっていました。そのくらいの規模を治めていくには、元老院で長く審議していたのでは事が進まない、ということでローマは3人の統治になりました。
クラッススは、とにかく大金持ちです。ローマ一の大金持ちでした。ポンペイウスという人は、これは圧倒的に武勲を挙げた人で、軍事的功績に優れていました。そしてカエサルは、彼らよりも少し年齢も若いですし、最初の段階ではあくまでも自分の政治的才覚で活躍しました。クラッススとポンペイウスの両者は非常に仲が悪かったのですが、これを調停したのもカエサルです。そうやってカエサルという人物は、活躍します。私の『ローマ帝国 人物列伝』(祥伝社)という本でも、カエサルのことをいろいろ書いています。
●「ブルートゥス、お前もか」の真意
先ほど、スッラは敵に対しては徹底的にやっつけたということを話しましたが、カエサルはそうではありません。カエサルも、徹底的に抵抗する人間に対しては、容赦なくかなり危ない手段を使いますが、恭順の意を示せば彼はむしろす...
(紀元前100年-紀元前44年)