東大ハチ公物語―人と犬の関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
動物の権利の問題点と倫理を語る上での新しい考え方
東大ハチ公物語―人と犬の関係(4)動物目線の語り方
一ノ瀬正樹(東京大学名誉教授/武蔵野大学人間科学部人間科学科教授)
動物実験には「3R」がある。1959年に提唱された世界的な基準理念で「削減(できる限り減らす)・改善(できる限り苦痛を与えない)・代替(できる限り別の方法をとる)」を原則としている。そのような流れの中、「動物の権利」や倫理の語り方について、東京大学大学院人文社会系研究科・一ノ瀬正樹氏は、新しい方法を提言する。(全5話中第4話)
時間:13分19秒
収録日:2017年4月4日
追加日:2017年6月16日
≪全文≫

●「動物の権利」と動物実験の「3R」


 「動物の権利(animal rights)」という概念には多様な問題性があります。一つは、動物の虐待に倫理的問題性がないとは極めて言いにくいこと。それから、動物実験についての「3R」=Reduction、Refinement、Replacementが広く認められていることです。動物実験に肯定的な方々でも、「3R」は必ず掲げています。

 Reduction(削減)は、動物実験の数を減らし、不必要な動物実験をしないようにしよう、ということ。今はどうか知りませんが、私が中学生の頃はカエルの解剖を行いました。カエルのお腹を切って、中身のなくなったカエルが水槽の中に浮いているような実験です。あれが本当に必要なのかというと、カエルの内臓の様子はもう分かっていて、人間の知識の中に蓄積されているわけです。だから、不必要な殺生である。ああいうことはしないようにしようという考え方です。

 それからRefinement(改善)。これは洗練化していこうということで、できるだけ苦しみを与えないような動物実験を考えていきます。

 それからReplacement(代替)。これは動物実験の代わりになるやり方があるならば、わざわざ生きた動物を使わないで、そちらを使いましょうということです。

 以上の3Rが、今は広く認められています。


●動物虐待は、その人の犯罪傾向を示唆する


 さらに、動物虐待がその人の犯罪傾向を示唆する点も見逃すことができません。

 子どもには残酷な面があります。大人同士の関係では普通指摘しないようなことを、ズバッと急に指摘してしまうようなところがあります。それは動物に対しての行為もそうで、トンボの羽をむしったり、カエルの足をちぎったりするようなことを、案外やってのけます。私も思い当たる節が全くないとはいえず、少年に特有の行動といえるでしょう。問題は、成人してからもそういうことをやる方がまれにいるところです。

 もう死刑囚として処刑されてしまった方なので実名を挙げると、宅間守という人がいました。小学校に乱入して子どもたちを何人も殺傷してしまい、死刑判決を受けて速やかに処刑されてしまった人物です。彼が成人してからも動物虐待を行っていたという情報が、処刑後に流れました。

 動物虐待と犯罪傾向は、非常にパラレルな関係にある。その事実は見逃しがたいわけです。


●「動物の倫理」を語る三つの立場


...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦