東大ハチ公物語―人と犬の関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
犬は人間より道徳的には圧倒的に優れている
東大ハチ公物語―人と犬の関係(5)「返礼モデル」の提案
一ノ瀬正樹(東京大学名誉教授/武蔵野大学ウェルビーイング学部教授)
環境破壊をせず、戦争をせず、過去に固執せず、自らの現状を潔く受容し、最後は静かに死んでいく犬たち。犬と人間を比較すると、「犬の高潔さが、道徳的には圧倒的に優れている」と東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏は言う。遠く古代ギリシアにも、そのように考えた一派が存在したようだ。(全5話中第5話)
時間:12分03秒
収録日:2017年4月4日
追加日:2017年6月17日
≪全文≫

●犬は人間より道徳的に高潔?


 実際、犬と人間とでは、犬の方が優れているのではないかと思える点は多々あります。とりわけ道徳的には、圧倒的にそうではないかと私は思います。

 まず、犬は環境破壊をしません。それから、戦争をしません。犬同士でけんかするときはあるのですが、人間の言うような戦争ではない。それから、過去に固執しません。時には、昔いじめられた人を覚えて復讐しようというような犬がいないでもありませんが、普通はあまり過去に固執しません。それから現状を本当に潔く受容します。そして、静かに潔く死んでいきます。犬は間違いなく人間より道徳的に「高潔」なのではないかと、私には思えるのです。

 哲学者たちも、実際にそう思ってきたきらいがあります。ソクラテスの弟子たちの中で、アンティステネスやシノペのディオゲネスなど、一般に「犬儒(キュニコス)派」と呼ばれる人々がそうです。


●「犬のような生活」を実践した哲学者たち


 「キュニス」は犬を意味する言葉で、「シニシズム」の語源にもなります。犬と人間を比べて、「犬の方が優れている」と言ったため、彼らの言説はある種の皮肉ととられ、「シニシズム」が皮肉を指す言葉になっていきました。「人間は優れている」という前提を端的に退け、実践的な哲学的態度を重視した人々だったわけです。

 ディオゲネスは、「樽に住むディオゲネス」とも呼ばれ、「犬のような生活」をしていたと伝えられます。ある時、アレクサンダー大王がディオゲネスのうわさを聞いて会いにいったところ、「ちょっとそこをどいてもらえませんか」と彼は言った。「日光を遮られるので」と理由を述べたという有名なエピソードがあります。一風変わった「犬のような生活」をした哲学者で、それが実践的にも徳にかなっていると示唆するための哲学上の立場を、生活面でも貫いた人です。

 キュニコス派と呼ばれた彼らが、本当の意味では「犬」をどう見ていたかについては、さまざまな議論があります。深く突き詰めていくと、いろいろ問題がありますが、犬を一つのシンボルとして掲げた学派が哲学の歴史上にはあったということです。「犬のような生活」を道徳的理想と考えた一派とも言えるでしょう。


●高潔で無垢で純粋な「哲学者の顔」とは


 私自身、「哲学者の顔」という小文を書いたことがあります。表題と私の名前で検索していただく...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「自分をコントロールする力」の仕組み(1)自制心と目標の達成
自制心の重要性…人間は1日4時間も何かを「欲求」している
森口佑介
【入門】日本仏教の名僧・名著~空海編(1)空海と最澄
空海と最澄の関係に大きな影響を与えた「密教」の位置づけ
賴住光子
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
キケロ『老年について』を読む(1)キケロの評価と「老年の心構え」
老年が惨めと思われる4つの理由とは…キケロの論駁に学べ
本村凌二
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(序)『ばけばけ』と『神国日本』
ラフカディオ・ハーンの遺著『神国日本』の深い意義とは?
賴住光子

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(4)「国のかたち」を守った男たち
全責任をかぶることを恐れず本義を貫く…樋口季一郎の決断と行動
門田隆将
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(4)注目されるタスクベース・アプローチ
AIは「まあまあの技術」?…タスクベース・アプローチでわかること
宮本弘曉
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
一ノ瀬正樹
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
50代からの親の介護~その課題と準備(3)仕事と介護の両立のために
介護離職は最後の手段、介護休業制度を上手に活用すべし
太田差惠子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(8)『門』の世界観と日本の近代化
伊藤博文暗殺…日本近代化で本当にいいことがあったのか
與那覇潤
ウェルビーイングを高めるDE&I(2)人と組織を取り巻く環境変化:後編
なぜ日本の幸福度は低すぎるのか?会社任せで失われる自律性
青島未佳