老荘思想に学ぶ
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物事を相対論で見るときにはその本質を見失っている
老荘思想に学ぶ(5)「陰陽論」からリーダーシップへ
田口佳史(東洋思想研究家)
老荘思想は、上司と部下のあり方を知るためにも、世の人の忘れがちなことを思い出すのにも役に立つ。皆さんは出世や楽しみのために、自分や他人の「命」をおろそかにしていないだろうか。価値観の礎となる陰陽論からリーダーシップに至るまで、ドキッとする真実を、老荘思想研究者・田口佳史氏が指摘する。(全5話中第5話)
時間:19分40秒
収録日:2016年12月5日
追加日:2017年7月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●比べる「相対論」から、見極める「陰陽論」へ


 老荘思想の説くところをお話しするのに、非常に重要な部分が「陰陽論」です。全てを陰陽で見るということですが、冒頭の章から二つ目に、次のくだりがございます。

 「天下皆(てんかみな)美の美たるを知る、斯(こ)れ惡(あく)のみ」

 「これは美しい」と人が言うときには、何かそれより「醜い」ものを基準として言っているのではないか。もっと美しいものが出てきたらどうするのかを問うているのです。つまり、比較対象のある「相対論」として見るのはよくない。「多い・少ない」「難しい・易しい」など、全て物事を相対論で見るときには、そのものの本質を見失っている、と言っているわけです。

 では、「誰かに比べてこの人は…」という見方をやめたらどう見るのか。人間にはその人の個別の良さがたくさんあるのだから、その人なりの良さを見る。松林などに行かれ、松を一本一本丁寧にご覧になると、一つとして同じ枝ぶりはありません。それと同様に、人間は地球上に65億人いると言われていますが、何もかも全て同じという人はいません。

 万物を生んだのが「道」だとすると、道はそこまで「個性」を重視しているというわけです。相対論は、個性を木っ端微塵に台無しにします。個性をよく見ていくことが重要であるというのが陰陽論です。


●人間の美しさと汚さをともに受け入れる


 「美の美たるを知る」の前にある文章は、どうでしょうか。

 「常無(じょうむ)は以て其の妙を觀(み)んと欲し、常有は以て其の徼を觀んと欲す」

 無欲になると「妙(みょう)」が見えてくる。この妙とは、微妙とか「妙なる調べ」の妙(たえ)であり、無欲のときには人間の非常に崇高なところが見えるという。

 ところが有欲、すなわち欲を持った瞬間に、「徼(きょう)」が見える。徼とは何かというと、直接的にはカオス(混沌)という意味で、欲望の渦巻く部分を指しています。

 人間というものは、妙だけでは成り立たないし、徼だけでも成り立たない。妙があれば必ず徼がある。つまり人間は、非常に美しい善良な部分も持っているけれど、ものすごく欲深く醜いところもある。そういうことを承知して人間と付き合うことが重要なのだということです。

 よく「あんなにいい人だと思っていたのに、どうして?」といった話を聞きますが、25歳の時から陰陽論で生きている私...

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