老荘思想に学ぶ
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実力、実質を伴わずにやり過ぎるのは愚の骨頂である
老荘思想に学ぶ(3)「過度」を戒める「道」の思想
哲学と生き方
田口佳史(東洋思想研究家)
老荘思想研究者・田口佳史氏が老荘思想の真髄を語る連続講義。3回目の今回は、老子の数々の言葉を例に「過度」であることの危うさを説く。実力、実質を伴わずにやり過ぎるのは愚の骨頂。「程を知って、あとは宇宙の根源である道に任せる」という老子の思想の根本を学ぶ。(全5話中第3話)
時間:15分53秒
収録日:2016年12月5日
追加日:2017年6月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●宇宙の根源を意味する「道」


 そもそも「老荘思想とは何なのか」ということですが、まず老子という人はどのような人かというと、あまり明確に「こういう人です」ということはどこを探しても出てこないのですが、唯一、司馬遷の『史記』に出てきます。その有名なエピソードで、孔子が老子に会いに行ったという話があります。会いに行った孔子が、そこで老子に欠点を追及されて、「こういうところは直した方が良い」と、こっぴどく言われて帰ってくるのです。

 これは象徴的に書いてあると思うのですが、孔子の儒家の思想に対し、老子の思想を道家といいます。なぜ道家かというと、「道」というものを表現しているからです。道とは宇宙の根源です。その宇宙の根源のありようを、自己のありようとして生きていくのが重要だと説いているものです。この「道」を中国語でいうと、「タオ」、あるいは「ダオ」と発音します。ですから「タオイズム」は、そこからきたものです。


●ダイナミックな老荘思想


 中国古典の二大思想は、儒家の思想と道家の思想の二つなのです。象徴的に「儒家の思想」といえば、孔子その人です。その孔子をぼろくそに指摘したのが、老子という老人なのです。

 そして、孔子が帰ってきて、弟子が「老子はどういう人でしたか?」と聞くと、ここがまた象徴的に「あたかも龍のような人間だった」と言うのです。

 老荘思想というと、一見、癒しの学のように受け取られていますが、実はベースには、この「龍のような」計り知れない広がりと強さ、何か今までの既成概念を粉々にされるようなものがあり、その点では非常にダイナミックなものなのです。宇宙の根源を「道」というぐらいですから、読みようによっては宇宙論なのです。そういうものから、本当に親しい仲の親子や夫婦といった人間関係、特に上司と部下などのあり方を説いているのです。


●過度を戒めた老子


 基本的には、現在のこの状況、あるいは政治や社会のあり方を良しとしないというものです。その良しとしない最大のポイントは、「やらないからあなたは不幸になっている」という論法が強すぎる、と言っているのです。本当にそうなんですか? と。つまり「やり過ぎるということはないですか?」と言っているのです。「やり過ぎるから、うまくいかないことの方が多いのではないですか?」と言って、過度、要するにやり過ぎるとい...

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