テロ対策の理論と実際
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テロ対策における自衛隊と警察の役割の違い
テロ対策の理論と実際(4)自衛隊の治安維持活動
政治と経済
片山善雄(元防衛省防衛研究所 防衛政策研究室 主任研究官)
テロ対策において自衛隊と警察の役割はどのように異なるのか。自衛隊は制限なく武器を使用することができるのか。防衛省防衛研究所防衛政策研究室主任研究官の片山善雄氏が、これまでの自衛隊のテロ対策活動を振り返り、あるべき自衛隊の治安維持活動について見通しを解説する。(全6話中第4話)
時間:9分26秒
収録日:2017年12月8日
追加日:2018年3月10日
≪全文≫

●自衛隊は警察部隊の空輸を行ってきた


 日本における軍事組織、すなわち自衛隊とテロ対策についてお話しします。自衛隊はテロ対策として、どのような活動を行ってきたでしょうか。まず、警察部隊の空輸があります。1995年、全日空機がハイジャックされた時に、自衛隊は警視庁の特殊部隊を、函館へ空輸しました。警察には、部隊を空輸する能力はありません。そこで自衛隊が警察部隊を空輸したわけです。しかし実際に、飛行機に突入して事態を解決するのは、警察の仕事でした。

 2001年9月11日にニューヨークとワシントンでテロがありましたが、その直後にも自衛隊が警察部隊を空輸しています。当時、沖縄ではアメリカ兵が非常に神経過敏になっていました。市民とトラブルを起こしてはいけないので、アメリカ兵は基地の外には出さず、その代わりに警察が基地の周囲を警備することにした。そこで、自衛隊が中部管区機動隊を空輸したのです。このように、自衛隊と警察の協力例が存在します。


●地下鉄サリン事件では自衛隊の化学部隊が出動した


 さらに何といっても、自衛隊のテロ対策活動を有名にしたのが、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件です。自衛隊の化学部隊が出動し、サリンに汚染された地下鉄車両を除染しました。当時はまだ、サリンという言葉が一般に知られておらず、警察や消防でも知っている人はほとんどいませんでした。そうした状況の中、自衛隊の化学部隊がサリンの除染や事件の情報収集に大きな活躍をしたのです。

 また自衛隊の中の医者である医官は、化学兵器に対処するマニュアルを持っています。そこで彼らも出動して患者さんの治療に当たると同時に、他のお医者さんの指導も行いました。

 今では、全国の警察、消防の方々には自衛隊の化学学校で、NBC(Nuclear Biological Chemical)兵器、つまり放射性物質や生物兵器、化学兵器に対する行動の講習を受けてもらっています。警察と消防は、化学事案に対するファーストレスポンダー(第1対応者)であり、彼らの技術向上が、テロ対策としては必要になってくるからです。化学学校で講習を受けた警察や消防の方々は、それぞれの地元に帰った後、今度は教官となって地元で講習を行います。こうした状況は1995年とは、隔世の感があります。

 また現在、機動隊のNBC部隊だけではなく、渋谷や池袋といった人出の多い場所の交番にも、化学...

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