テロ対策の理論と実際
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軍事組織を利用したテロ対策の注意点
テロ対策の理論と実際(3)軍事組織の活動
片山善雄(元防衛省防衛研究所 防衛政策研究室 主任研究官)
軍事組織がテロ対策として、治安維持活動を行う場合、どんな点に注意しなければならないのか。警察との間で意思の不疎通が起きることはないのか。防衛省防衛研究所防衛政策研究室主任研究官の片山善雄氏が、軍事組織を利用したテロ対策の注意点を、各国の事例を検討しながら解説する。(全6話中第3話)
時間:9分54秒
収録日:2017年12月8日
追加日:2018年3月9日
≪全文≫

●法執行機関が主導し、軍事組織が支援する


 次に、軍事組織によるテロ対策についてお話します。先に述べたように、治安維持と戦闘は異なります。テロ対策は当然のことながら予防、制圧、捜査、裁判においても、法執行の形を取るのが普通です。テロリストを制圧しさえすれば、何でもいいというわけではありません。そこに正当性を確保しなければならないのです。したがって、強力な武器がかえってマイナスとなる恐れも出てきます。

 他方、軍を含めて、他の機関は、主務機関である司法機関や法執行機関を支援するのが基本です。他の機関、例えば軍事組織が警察に取って代わるということは、民主主義国ではあり得ません。よく縄張り争いが起きるのではないかといわれますが、それはあり得ないことです。あくまでも法執行機関が主導して、それを軍事組織が支援するというのが基本です。

 武器の使用についても、人権の面で厳しい制約がかかります。これは治安維持行為である以上、当然のことです。治安維持行為と戦闘は大きく違うのです。戦闘では武器の使用に制限はありません。敵の人権を考える必要はないのです。それどころか、一般市民を巻き込むということもためらいません。しかし、法執行は違います。武器の使用や人権の制限がどこまで可能かということを判断できるのは、やはりプロである法執行機関なのです。


●「警察は内、軍は外」というすみ分けがなされている


 ここで、軍事組織が治安維持活動を行う場合の注意点を見てみましょう。

 第1に、先進民主主義国では、均衡抑制原則、つまりチェックアンドバランスが確立されています。民主主義国では、一つの組織に権力を集中させないということが原則です。例えば、三権分立では、司法・立法・行政がそれぞれにバランスを取り合って、過度の権力が集中しないように設計されています。国家の実力組織である警察と軍についても同様です。警察は国内での権力行使、軍隊は外敵に対しての権力行使、すなわち「警察は内、軍は外」というすみ分けがなされています。

 日本では、過去において、軍隊が国内で暴走した残念な事例がありました。ドイツでも同じです。しかしまた、イギリスやフランス、アメリカも同じような経験をしてきました。つまり、軍隊が国内で強制的な活動をするということに、非常に慎重になっています。

 第2に、軍事組織が治安維持活...

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