テロ対策の理論と実際
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自由と人権を両立するテロ対策のあり方とは?
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テロに対する過剰反応こそがテロリストの成功例となる
テロ対策の理論と実際(1)テロとは何か
片山善雄(元防衛省防衛研究所 防衛政策研究室 主任研究官)
2020年東京オリンピックに向けて、本格的なテロ対策が求められている。しかしテロとはどのようなもので、その真の脅威はどこにあるのか。防衛省防衛研究所防衛政策研究室主任研究官の片山善雄氏は、テロに対する過剰反応こそテロリストの思うつぼであると主張する。(全6話中第1話)
時間:8分31秒
収録日:2017年12月8日
追加日:2018年2月21日
≪全文≫

●テロには3つの最大公約数的特徴がある


 防衛省防衛研究所の片山善雄と申します。テロ対策の理論と実際についてお話しいたします。まずはテロ対策の理論からお話しします。そもそもテロとは一体何でしょうか。学説や法律や条約によって、さまざまな定義がありますが、3つの最大公約数的特徴があります。

 第1に、社会への訴えがある暴力だということです。正義や経済、宗教に関する主義主張が、テロの背後にはあります。したがって個人的な怨恨や金銭目的の暴力ではありません。

 第2に、テロは心理的衝撃を重視する暴力です。テロリズムの語源は英語の「terrorize」(脅す)です。つまり、社会を恐怖や混乱に陥れたり、注目を集めたりすることが目的です。

 第3に、過剰な反応を期待するということです。つまり、社会が騒げば騒ぐほど、テロの効果は大きいといえます。ここから、粛々と法律にのっとって処理するということが、最善のテロ対策だと分かります。


●テロとは犯罪であり、テロ対策とは治安維持行為だ


 次に、テロ犯人、テロリスト、テロ攻撃の傾向を見てみましょう。第1に、テロリストは住民の間に隠れているということです。なぜなら、物理的には非力だからです。領域を支配する能力はありませんし、見つかってしまえば捕まります。

 第2に、主として私人による行為です。国家が支援したり、国家の工作員が実行したり、あるいは国家が国民を弾圧したりする場合もありますが、今日では、国内の反体制派によるテロが顕著です。

 したがって、「新たな戦争」という言い方は正しくありません。国、または国に準ずる集団が国境を越えて攻め込んでくるわけではないからです。もともとその国にいる者、あるいは入国して着た者が事件を起こすのです。それゆえ、テロとは犯罪であり、テロ対策とは治安維持行為だということになります。


●反政府武装勢力は「面」を支配できる


 テロと混同されやすい行為を、テロからは区別しておきましょう。第1に、反政府武装勢力が引き起こす、ゲリラ戦や反乱(インサージェンシー)、内戦です。例えば、アフガニスタンのタリバンや、シリア、イラクのイスラミックステート(IS)といった反政府武装勢力は、政府の統制が及ばない地域を支配しています。彼らはテロリストとは違って、物理的に強力です。ISは一時、イラク政府軍を打ち破りました。つまり、「...

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